第2話 不明
「うわぁぁぁっっ!!!」
急な大声に反応して駅長は小走りで駆け寄った
「ワタル君大丈夫か⁈」
ワタルは何が起きたのか理解するのに少し時間を要したがすぐに駅長から説明があった。
「びっくりしたよーー!
お客様が駅員が急にふらついて倒れまし た! って呼びにきてさ、
大丈夫?貧血かな、寝不足?」
どうやら初めて人身事故を目の前にして
驚きのあまり倒れてしまったらしい、
ワタルは自分の情けなさで少し顔を赤らめたが
もう大丈夫ですと駅長に伝える。
しかし今日は人手も足りてるし、泊まり勤務は
変わってあげるから家に帰ってゆっくり休みなさいと半ば強引に帰された。
夕方、夏前ということもあり
日はまだ顔を出したまま下校中の学生達の髪の毛を明るい色で馴染ませていた。
家に着きタバコに火をつけ、多分倒れた時に打ったのであろう後頭部をさすりながらワタルは考えていた、
そうあのホームに身を投げ出した女の事だ。
「殺意は死んだらどうなると思う?」
確かに女はそう言った。
ワタルの事を見ながら。
なぜ俺に言ったんだ、会ったことあるのか?
なぜ飛び降りたんだ、単なる自殺か?
しかしワタルには身に覚えが "全く" 無い。
ケイタに久々の泊まり勤務被れなくてごめんと伝えようとしたが、人身事故を見ただけで倒れたなど自分から言うのにはどうも恥ずかしさがあったためやめた。
次の日、駅長からシフトはそのままでいいから
と、連絡が来ていた。
本当は今日泊まり勤務明けになるので休みみたいなものだ、次の日も休みなので
実質2日お休みをいただいた。
次の日
とくに予定も無かったので今日はダラダラする事にしたワタルは
普段見ることの無い昼間のワイドショーをぼーっと見ていた。
芸能人の不倫騒動、選挙の話、
沖縄の基地問題、新しく出来るショッピングモールの事。
いつもネットニュースなどで、スワイプしながら軽く目を通すレベルだが、改めて見てみると
意外と面白いものだ。
アナウンサーの食レポを見ていると腹が減ってきてワタルは棚にあったカップ焼きそばにお湯を注いだ、自炊はあまり得意な方ではないし、
今日は外に食べに行く気分でもない。
焼きそばに付属のソースとマヨネーズをかけ
混ぜていると、ワイドショーはある事件について放送し始めた。
「一昨日、16日の東京都世田谷区経堂でおきた20代女性殺害事件について、警察から身元が判明したと発表がありました。」
あぁ、この事件もネットニュースでちらっと目にした。
経堂に住む若い女性が殺害された事件。
首、両腕、両足が切断され眼球も取り除かれていたとか。
ネットでは実写版エグゾディアなどと品のないコメントなどもあったが、あまりの無惨さに
ワタルの記憶の中にも残っていた。
「女性の名前は渡辺ユリさん23才。
都内で保育士として働いていたようで職場の関係者によると、事件当日は退勤後すぐに帰ったのでその後の様子は誰も知らないとの事です。
警察は関係者に話を伺い、犯人逮捕に向けて精進するようです。」
渡辺ユリさんの顔写真と共に事件の内容が放送されていた、
顔と名前が分かっているのであれば日本の警察は優秀なのですぐ犯人は捕まるだろうと、
ワタルは思い、焼きそばを食べ進める。
ちらっと、画面に映る渡辺ユリさんの顔を見る。
「あの女だ。」
ワタルは確信した。
あの時駅に飛び降り、俺に
「殺意は死んだらどうなると思う?」
と問いかけてきた女に間違いない。
でもなぜ⁉︎
四肢は切断されていたはずなのに
なぜあの時駅に?
亡くなったのは一昨日とニュースで言ってた。
俺が見たのは昨日だ。
どういうことだ。
何が起きているのか分からなくなり、
少しパニックになったが
いや、そんなはずがない
きっと見間違いだ、疲れてるんだ。
休もう、なんでもない、気のせいだ、、、
ワタルは少し休むことにした。
深夜 2:45(東京都内)
「やめて!助けて!!」
「落ち着けよーー
ただ、四肢切って目取るだけだから。」
「お前には分かるか?
殺意は死んだらどうなるか、、。」
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