第2話 赤子って、難儀だね
転生してから、一か月が経っただろうか。
その間、私がどのように過ごしていたのかって?
そりゃ勿論お前、大変仲睦まじいご両親の愛情を注がれ、開放的なトイレをし、ミルクを飲み、眠る生活を繰り返しているに決まってるではないかHAHA☆。
……いやだって、まだ近くに行かないと人の顔すら見えないくらい視界ぼやけるし。すぐ眠くなるし。尿意の抑えが効かないし。歩けないし……。
別に魔法を使えば空くらい簡単に飛べるし、眼だって魔力で強化すれば見えるようになるし、眠気だって脳に回復魔法を促せば瞬時に消え失せさせる事だって出来る。
……しかし、赤子の睡魔――これだけは侮ってはいけない。
そう、いけないんだ。
何て言ったって、睡魔を感じた次の瞬間にはもう意識は闇の中に落ちるからな、マジで。
外の景色を見たいと思い外に出たが最後、突然の睡魔に耐えきれず眠ってしまい、そのまま家にも帰れずなんて事になったら……うむ、あらぬ心配をかけさせてしまうだろうな。
とはいえ、何もしないというのは流石に時間が勿体ないので、私は日々魔力を黙々と練っている。
魔力と言うのは、魔法を発動させる際には必ず使用する人が持つオーラのような物。
その魔力を練る事によって、何が起きるのか……それは単に、魔力の質が向上するという点にある。
魔法の威力というのは、魔法陣に魔力を過剰に込めるのも大事だが、一番大事なのは発動者の魔力の質だ。
魔力の質が高ければ高い程、魔法陣に魔力を過剰に込めなくてもとてつもない威力を発揮する事が出来る。
故に、魔力の節約にも繋がるわけだ。
しかし、過剰に魔力を込めるというのもそれはそれで中々に難しい作業である為、誰もそんな事を好き好んでする人間はあまり居ないだろう。
(しっかしまぁ、ちゃんと前世の状態を維持出来てて嬉しいね)
初めて魔力の質を向上させようとした時、私は気づいた。
新しくなったこの体が持つ魔力の質というのは、前世の私――ハイゼス・シーヴァルと同等だったという事に。
無論、それは嬉しい事だ。
なんせ、転生魔法に前世の私の力を引き継げるように仕組んだのは私だから。
それが成功していると知って、喜ばない人間は居ないだろう。
(……この体なら、更に高みへとイケる……!!)
確信を得る。
やはり、転生して正解だった。
私は――まだ更に強くなれる。
正直、逆に退化するんじゃないかとか一瞬脳裏を過ったりもした事あったけど――いやはや、人生のやつってば、意外と思い通りになるものだね。
「あら……?やっぱり、ゼスカから強力な魔力を感じるのだけど……?」
……極々たまに、私の魔力操作は完璧な筈なのに母さんが魔力を感じ取ってくる。
どうやら私も、まだまだ修行が足りぬらしい。
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