第4話 震えるシュロの木
遠足で足をくじいた生徒を救助するため公園の駐車場に車を取りに向かった。フェンス向こうに小さなシュロの木が風もないのに震えて異様に目立った。しかし、よく見るとそれはブルブルと震えている茶色のトイプードルであった。犬はおそらく飼い主が車で去った方角をじっと見つめて、迎えが来る希望をまだ捨てきれずにいた。そして、とり残された恐怖に必死に耐えていた。ひどく寒い夕暮れ時だった。敷地内に犬が捨てられていると公園事務所に電話を入れようか考えた。しかし、仕事の持ち場に戻ることを優先して犬を放置した。その晩さらに気温は下がった。10分も屋外でじっとしていれば凍ってしまいそうなほど寒かった。あれから何時間、犬は同じ場所にいるのだろう。諦めて人気のある遊具の方に移動できただろうか。否、犬が一方向を見て動かず、そのまま倒れて絶命している姿が思い浮かんだ。帰宅して暗くなり始めた頃、公園事務所に電話すると職員が出たので報告した。場所を説明すると見てきますと言って電話は切れた。それからどのぐらい後に職員は様子を見に行ったのだろう。行ってくれたのだろうか。いずれにしても他人の手に委ねたと納得して忘れることにした。
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