第3話 新設校と男女平等の幻影
G氏は高校時代の2年先輩で新設校の第1期生であり、荒れた校庭の石拾いをして創立期を支えた学年である。振り返ると自分自身新設校を渡り歩いてきた。小学校入学時は子どもの足で40分はかかる橋向こうの学校に登校班で延々歩いて通学した。土手を登ると牛が草を食む。橋の木目が抜けた親指大の穴に、養護教諭のハイヒールのピンがすっぽりハマり、ひどく転んだのを目撃した。母が雪を被ったら落ちないように気をつけろと言った肥溜めがある。近辺に職業訓練校があり、学生は子どもの目から見ると恐ろしくワルだった。病弱で遅れて登校する自分と同じ時間に徒党を組んで数人がこちらに向かってくる。もう、帰るのか。遊びにいくのか。こっちは嫌いな学校に頑張って登校してんだよ。あんたたちみたいな怠け者とは一生関わらないよ。しかし、20歳で自分はその学校の卒業生と付き合うことになる。
小学校2年で近くの田んぼの真ん中に建設中の小学校が完成した。下校途中、イナゴを捕まえては袋に詰めた。用水路の入水箇所にメダカがたむろった。よく見ると無数のカラス貝が川底に沈んでいた。
中学の学区は線路向こうの海沿いだった。東日本大震災の時にはこの線路を堺に海側が被災したという。自分たち家族は小学校の卒業式を終えると、車に最後の荷物を詰め込んで、造成された山上の新興住宅地に引っ越した。それでも、中学は山を満員バスで降った旧市街地の中学に1年通学した。バスで痴漢に合った。クラスで孤立した。友達グループができた。その中の読書好きな友人からフェアチャイルド機墜落事故の『生存者』という分厚い本を借りた。生存者は飛行機の座席シートの鉄板で人肉を焼いて食べ、生き延びた。
確も厳しい世の中を我々は生き延びている。
家の目の前に建設中の中学が完成し、2年からはそこに通学した。それでも登校はぎりぎりで変わらず。忘れ物をしては職員室から死角のプール裏をこっそり通って、自宅に取りに言っていた。夜中に弟と一緒に金網を登ってプールに入った。校門前のMさんが一緒にプールに入ろうと言ってきた。彼女は学年でトップで美人のリーダー的存在。それまで口をきいたこともない。夜中にプールに入っているのが何故かバレていたらしい。当日、彼女の母親がプールサイドにいたのに驚いた。どのようにしてそこに居たのかは記憶にない。
そして高校。家は貧しかった。父は私立の滑り止めの入学金を支払っていなかった。交通費も不要の新設の高校に合格できないと在宅になる瀬戸際だった。県内で初のブレザーにネクタイの男女共学の高校だった。それを着て、ネクタイの結び方を何度も練習した頃には差別はない。男女平等だという幻影に取り憑かれていたかもしれない。
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