内緒の憧れ
俺は絵梨に無理矢理連れられその転校生『不死原幻斗(ふじわらげんと)』に会いに行くことになった。なんかあまり見たことない苗字だな、藤原のほうはよく見ることはあるが不死原と書いてふじわらと読むのは初めてみる。絵梨は俺と二人で行こうとしたのだが……まあ当然それを止めるやつが一人いるそれは……
「なに二人だけで行こうとしてるのよ琇、絵梨!!(本当は私が琇と二人だけで行きたいのに……ずるい。それになに絵梨は琇と二人で行こうしてるのよ!! 絵梨の場合何言っても聞かないだろうから私もついて行って絶対に二人きりにはさせないんだから!!……そのあと琇を遊園地にでも誘ってみようかしら……でも恥ずかしい……でも会えなくなってから後悔はしたくない、よし頑張って誘おう。私なら出来る私なら出来る……あれそういえば転校生の不死原幻斗がいるクラスってあの月森凛(つきもりりん)がいるわよね……もし琇が凛のこと好きになったりしたらどうしよう)」
そう千紗はいつも俺と絵梨が二人になる瞬間には必ず止めてくる……必死に止めてくる千紗はとてつもなくかわいすぎる!!
ああもう必死になってぴょんぴょん跳ねながら怒ってる姿が本当に可愛すぎて……ってすまん取り乱した。
その転校生のクラスには月森凛、二つ名は月光姫(ムーンライトプリンセス)……って絵梨が言ってたな。まあ俺は千紗と一緒に居られるならどこでも楽しい……そう伝えられたらいいんだけど……恥ずかしすぎるのもあるけど失敗して今の関係が壊れるのが嫌だ。
分かってる俺は臆病なだけ
そう考えながら俺は千紗と絵梨と一緒に不死原幻斗のクラスに向かった……のだがなんだか騒ぎ声が聞こえる。
まあ休憩時間だから仕方ないのだがいつものような騒がしさではなく……もっとこう、誰かが倒れてそれに驚いて叫んで騒いでいるような、そんな感じがする。
なぜそう感じるかというと……まあ昔にクラスメイトが突然倒れて痙攣したことがあった。
その時の教室の騒ぎ方と似ている。
俺はその時突然の出来事に焦りすぎて何も出来なかった。
その時倒れたクラスメイトはなんとか無事だったからよかったものの俺はあの時の何も出来ない自分を変えることを決意したんだ。
その倒れたクラスメイトというのが千紗だ。
あの時俺は千紗を助けられなかった……あの時先生が動いてくれたおかげだが、救急車で運ばれている千紗を見ていると俺は生きた心地がしなかった。もしも千紗が死んでしまったらと最悪の想像ばかりしてしまうのは……やっぱり俺の悪い癖なんだとあの時改めて実感したし……なにより自分の無力さを嫌というほど感じさせられた。
……おっといけない話が少し脱線してるような。
俺は教室の中をみると人が倒れていた。
倒れている人たちを見ている月森凛は何故か冷静……というか一瞬だけ冷酷な目をしたように見えたが、気のせいか?
それに多分あの男だよな、不死原幻斗ってやつ……あれは噂にもなるほどかっこいいとは思うが……なんだろうあいつの周りの空気が重い気がする。
あの感じは悪霊の類か?
俺には本当に……本っ当に弱いが霊感がある……ってまあ今は必要ないかこの説明
俺がそう考えていたら絵梨が隣にいないことに気づいた俺は周りを見渡すと絵梨が倒れている人たちを担いで叫んでいた
「おい、早く道を開けてくれ!! 早くこいつらを保健室に連れて行かねえと……すまんな琇、千紗言い出しっぺの俺だけどちょっと一旦抜けるわ。あとで幻斗のこと教えてくれよな!!」
そういって絵梨は右腕に三人、左腕に三人計六人を担いで走って保健室に向かった。
その後不死原幻斗は月森凛に連れられどこかへ向かっていった……二人がなにか会話していたが俺たちは聞こえていないからな。
まずは保健室の絵梨のところに行くか……本当はせっかく千紗と二人になれたからもう少しこの時間を楽しみたい……でも絵梨はすぐに倒れている人を助けた。
……まあたまに鬱陶しく絡んでくるところもあるが絵梨のこういうところは本当に尊敬出来るし……すぐに行動出来るところは俺は見習いたいし……本人には言えないけど憧れたりもしてる。
……? 千紗が俺の袖を指で引っ張って何か言ってる
「ねえ、さっきの人たち大丈夫かな? 絵梨が運んでくれたからちゃんと保健室にはたどり着いたとは思うけど……何か体調に良さそうなものを買っていこうよ。売店に売ってるはずだからさ……いいでしょ琇(あの人たち大丈夫かなたしか私たちの学校の売店はなんでも揃っているって有名だし……最新式の電化製品が一万円台で売ってるの見た時は驚いたけどね……あれ今私琇の袖を……どうしよう無意識だった、恥ずかしすぎる。でもこれで、すっ少しくらいは琇だって私のこと見てくれるわよね? でもそれで見てもらっても……見てもらうならちゃんと私自身の行動で私だけを見てほしいな……やっぱり琇を遊園地に誘おう。出来たらだけど絵梨に手伝ってもらえるか頼んでみよう……だってさっさすがに一人は恥ずかしいんだもん)」
そんな琇と千紗を見ていた男、名を増田駿輔(まつだしゅんすけ)と言う。
彼は二人を見てこう思った。
『俺も樹里(いつき)とこんな仲良しカップルになりてぇな……そうだ!! これから樹里を遊園地に誘ってみるか』
この時駿輔は琇と千紗の二人が付き合っていると勘違いをしていたが、駿輔と樹里がこのあとの遊園地にて琇と千紗を付き合わせるきっかけにもなる。
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