第20話

 そして翌日。わたしは朝早くから聖堂の掃除に励んでいた。


「ゆっくりしていても良いのですよ」


 おじいさんは言う。


「いえ、せっかくですから綺麗にしていきたいんです!」


 そう。ここの掃除をするのも今日で最後だ。掃除スキルとやらを実感できるのも最後だろう。隅々までピカピカにできる快感を、しっかり味わってから帰ろうと思ったのだ。


「よし!」


 次はみんなへの挨拶をする。


「トーコ〜。今までありがとう〜」


 泣きながら挨拶してくれたのはクロエだ。こっちにきて一番仲良くしてくれた。クロエとの別れが一番辛いかもしれない。


「こちらこそありがとう」


 目をしっかり見つめて笑顔で言う。最後は笑顔で別れたい。


「トーコさん!」

「ありがとう!」


 子どもたちも連れ立って挨拶に来てくれた。一人一人と握手して別れを告げる。


そして正午。聖堂に集まったみんなの顔を見る。セーヤくんはお世話になった討伐隊の皆さんと挨拶を交わしている。


 わたしはクロエと子どもたちに向けて言った。


「掃除と洗濯はしっかりすること!」

「はーい!」


 それは聖女の言葉として代々言い伝えられていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る