第11話
「うわーん。終わるわけないよ」
「クロエ、がんばろ」
私たちは聖堂で帰還の日を迎えた。クロエの話どおり私たちの前には山と積まれた馬具や防具や武器がある。そこにはあの剣のような黒い煤けた汚れや、緑色の粘着質な汚れ、カピカピに乾いた赤黒い汚れなどが付着していた。これを次の出立までに綺麗にしなければならない。
「大仕事ね!」
「なんでそんなにやる気なのお」
わたしはぶんぶんと腕を振り回して早速掃除に取り掛かった。度々泣き言を言うクロエの尻を叩く。
そんなこんなでわたしたちはなんとか掃除を終えた。全部終えるのに五日かかった。これから魔術師さんのチェックを受けるらしい。
「こんにちは。掃除ご苦労様です」
魔術師さんは黒いローブを目深に被っていて表情は見えない。口調からして丁寧な人のようだ。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
わたしとクロエは労いの言葉に感謝の意を述べる。チェックとはどのようにするのだろう。全部やり直しになったりしたら結構ショックだ。
「ではチェックを始めます」
魔術師さんはメガネを持ち、矯めつ眇めつして整理された馬具や防具を見て回る。
「これは!」
魔術師さんが驚きの声をあげる。悪い知らせじゃありませんように。
「これを掃除したのは?」
魔術師さんは一際装飾の華麗な防具を指差す。それを掃除したのはわたしだ。
「わたしです」
ここは正直に言うしかない。
「こちらへ!」
わたしは魔術師さんに連れられて聖堂に向かうのだった。この展開覚えがあるなあと思いながら。
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