第10話

 おじいさんによると、わたしが磨いていたのは「穢れ」を受けて朽ちてしまった聖剣だったらしい。聖なる剣があるなんてさすがは異世界だ。


 そんな物を磨いて復活させてしまったものだから当然ただでは済まない。


「穢れを払ったのはこのトーコである」


 おじいさんは朗々と言う。


「ここにトーコを聖女とする!」


 場内からは「おお」と声が上がる。引き気味なのはわたしだけだ。


「ちょっと待ってください聖女なんて……」

「勇者様と聖女様の揃った我々は必ず穢れに打ち勝てるだろう!」


 おじいさんは涙を流しながら宣言している。よっぽど嬉しいことなんだろうけどわたしは自分が聖女だなんて信じられない。だって掃除と洗濯のスキルしか持ってないんですよ?


 そんなわたしを尻目に会合は粛々と進み終わってしまった。わたしは正式に聖女ということになってしまったらしい。


「すごいね! トーコ……様?」

「やめてよクロエ」

「よかった! お疲れトーコ」


 こんなことで扱いが変わるなんて不気味だ。いつものように接してくれるクロエに救われた。


「そう言えばもうすぐ帰還の日だね」

「帰還の日?」

「そう」


 クロエによると帰還の日とは「穢れ」から生み出される魔物の討伐部隊が帰ってきる日らしい。無事に帰ってくるとちょっとしたお祝い事になるということだ。


「馬具や防具の掃除で忙しいから私たちには関係ないんだけどね〜」

「掃除かあ」


 わたしはクロエに話を半分聞き流しながら、未知の「魔物の汚れ」に思いを馳せるのだった。

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