第6話

 三角巾で簡易的にマスクをして孤児院を覗く。中には十数人の子供がいて、ベッドに横たわらされていた。総じて顔が赤く、息苦しそうだ。


 締め切られた部屋はじめっとしていて、空気が悪い。これでは治るものも治らないだろう。わたしは掃除用具を片手に中に入った。


「みなさん、いまから掃除をします」


 静かな声で語りかける。


「気にしないで寝ていてくださいね」


 子供たちはそれぞれこくんとうなづいた。


 まず窓を開けて換気をする。壁をはたいて、床掃除をする。洗濯して持ってきた新品のシーツを子供達のシーツと取り替える。


「ごめんね。すこし我慢してね」

「ううん。ありがとう」


 子供たちはすこし笑顔を見せてくれた。辛いのに強い子たちだ。わたしはなんとしてでもこの子たちを見守ろうと心に決めた。


 翌日。孤児院では子供たちがすこし元気を取り戻していた。


「トーコさん!」

「今日もおそうじ?」

「今日もお掃除しますよ。みんな寝ていてね」

「はーい」


 これから快癒していきそうな雰囲気に、ほっと胸を撫で下ろす。


 それから三日、子供たちはすっかり元気になったのだった。

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