第5話

「ふう!」


 わたしは額に流れる汗を拭いた。今日は聖堂の掃除担当だ。男の子と一緒に飛ばされた時はどうなることかと思ったけど、結構元気に暮らせている。


 男の子の方はというと「穢れ」から生み出される魔物と戦うための訓練を受けているらしい。今日も訓練場のそばを通りかかったとき会釈をしてくれた。元気そうでよかった。


 壁のゴミをはたき終わったので今度は床の掃除に取り掛かる。大理石の床は傍目には綺麗だが拭くと意外と汚れが落ちる。掃除スキルのおかげか、手前味噌だがピカピカに磨き上げられている気がする。


 自分の掃除の手腕に惚れ惚れしていると、昨日のおじいさんが近づいてきた。


「これは……ずいぶん綺麗になりましたな」

「ありがとうございます!」


 おじいさんは目を見張っている。わたしは誇らしい気持ちになった。


「ところで」


 おじいさんは神妙な顔をして言う。


「孤児院には近づかない方がいいですよ」


 聖堂には併設の孤児院がある。近づかない方がいいとはどう言うことだろう。


「疫病が流行っているのです」


 疫病……流行り病ということか。それなら納得だが、子供たちは大丈夫なのだろうか。


「他の職員にも近づかないよう言い付けてありますからあなたも気をつけますよう」


 ということは子供たちは放って置かれてるということだろうか。大人として見過ごしては置けない。わたしは様子を見にいくことにした。

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