第7話 仲直り
「ヴァイオレット。話したいことがあるの。部活で待ってるから、良かったら来て」
アリスはそれだけを告げ、緊張した顔のままヴァイオレットとの通話を切った。
「アリス……」
ティーが小さな声で言い、そっとアリスの手を握る。
それから何分か経ったとき、ドアノブがまわり、部室の扉が開いた。
「ヴァイオレット……!」
そう、扉を開いたのはヴァイオレットだった。そして、駆け寄るアリスに向かって、ヴァイオレットは「アリス、ゴメン!」と言い、頭を下げた。
「あ、あの、ヴァイオレット……?」
戸惑うアリスに、顔を上げたヴァイオレットは言う。アリスの目を真っ直ぐに見て。
「アリス、ゴメン。私、ちゃんと自分の気持ちを伝えてなかった。アリスはアリスのままでいいんだよって。多分アリスは、アガーシャみたいなリーダーになろうとしてたんだよね。リーダーらしくしようって頑張ってたんだよね。でも、私は無理してリーダーらしくしようとしているアリスを見るのが嫌になってきて、でもそれを上手く伝えられなくて、アリスを傷つけた。アリスはアリスのままでいいんだよって、そうやって伝えてあげられなかった。本当にごめんなさい」
そう言ったあと、また頭を下げたヴァイオレット。その姿を見て、アリスが口を開いた。
「あのね、ヴァイオレット。私の方こそごめんなさい。私、リーダーとしてしっかりしなきゃって思ってた。私にとってリーダーといえばアガーシャだから、アガーシャみたいになればいいんだって思って、必死にアガーシャの真似をしてた。だけど、ヴァイオレットと同じように、ジュミもティーも、私らしくいていいって言ってくれた。だから、私は、自分らしいリーダーになろうと思う。みんなのことを頼ることも多いと思うけど。それでもいいなら、お願い、ヴァイオレット、戻ってきて」
そう言って、頭を下げた瞬間。ヴァイオレットがアリスを抱きしめた。
「私……戻ってきてもいいの?私、アリスと仲悪いのイヤだから謝りたくて来たけど、戻ってきてもいいの?」
ヴァイオレットの言葉に、「もちろんよ……!」と言い、ヴァイオレットを抱きしめ返すアリス。
良かった。2人が仲直りしてくれて。やっぱり、この2人が仲良くしてないと私たちも調子が出ないわよ。
「よし、とりあえず、練習しよー!ティーはなんだか動きたくなってきたよー!」
そう言いながら、ティーは2人に飛びつく。そして、私の方を見てニッと笑った。
もう、調子いいんだから。そう思いながら、私も2人……いや、ティーを含めた3人を抱きしめた。
「ねえ、ヴァイオレット、アリス。ティーたち、去年と同じじゃなくていいんだよ!去年は去年、今年は今年。名前は同じWorld Flyers!だとしても、違いがあっていいんじゃないかな!」
ティーが言った。本当、その通りよね。
「だからね、言わせて!ティー、思いついたのー!今年のキャッチフレーズ!こんなのはどうかなあ!」
そう言い放ち、ティーは部室のホワイトボードに文字を書いていく。
『世界に羽ばたけ、Flyer!』
世界に羽ばたけ、か。
「いいじゃん!私コレ超好きだよ!」
ヴァイオレットが楽しそうに言い、アリスも「そうね!私も好きだわ!」と言う。
「そうね。それに、私たちの夢にもピッタリじゃない?」
最後に私が言うと、「でしょ?」と言ってティーは笑った。
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