第4話 解決の糸口
はぁ、はぁ……
ヴァイオレットってば、どこ行っちゃったんだろう。おうち帰っちゃったのかな?荷物置いてるけど……
とりあえず、ポケットからケータイを取り出して、ヴァイオレットに電話をかける。
けど、聞こえてくるのは、呼出音だけ。呼出音が留守番電話メッセージに変わってしまったので、私は電話を切った。
ヴァイオレットは私と同じ、通学生なんだよね。ちなみにジュミとアリスは寮生だけど。
まあそれで、方向が同じってこともあって、部活後は一緒に帰ってたから、ヴァイオレットのおうちはなんとなくわかる。
この辺だったよね、確か……あとは、この中からスミスっていう表札を探せば完了。あ、あった。
多分ここでいいと思う。ヴァイオレットはよく、「うちの辺で一人だけ外国人だからって見すぎー!」って文句言ってたから、ここでいいはず。
ドキドキしながら私はインターホンを押した。「ハーイ」と聞こえた声に、「ヴァイオレットのおうちですか?」と言うと、「ちょっと待ってね〜」と言われた。
今の声、ヴァイオレットのお母さんかな?ヴァイオレットより少し低い。
そんなことを考えていると、ドアからヴァイオレットのお母さんが顔を出した。
「こんにちは、ティー。ヴァイオレットにティーが来たことを話したんだけど……ごめんね、ヴァイオレット、今は誰にも会いたくないって……」
お母さんが申し訳なさそうに言う。
誰にも会いたくない、か……なら、また別の日に来た方が良さそう。
「大丈夫です、ありがとうございました」
そう言って私はヴァイオレットの家から離れた。
とりあえず部室に戻るかな……と思い、なんとなくケータイを開くと。チャットアプリに通知が来ている。
『ティー、今日はとりあえず解散にしたわ。次の練習日は始業式の日だから、出来たら来てね』
ジュミからのメッセージだった。そっか、とりあえず解散したんだね。え、グループの解散じゃないよね……?日本語は難しいや。
『りょーかい、ヴァイオレットにも伝えた?』
とメッセージを送る。
さあどうしよう……部室に戻るのもなぁ。荷物も特に持って帰らなきゃいけないものは無いから、私も帰ろっと。
おうちに着くとササッとシャワーを浴び、着替えてベッドに向かう。そして私はある人に電話をかけた。
「どうしたの、ティー?」
「アガーシャ!助けて!」
電話に出たアガーシャにヘルプを求める。そう、私が電話をかけたのはアガーシャだった。
私の助けてという言葉に驚いたのだろうか、一瞬の間のあと、アガーシャは「なにがあったの?」と言った。
「あのね、今日初めての練習でね、ヴァイオレットずっと喋ってなくてね、アリスが大丈夫って言ったらね、ヴァイオレットがアリスはムリしてる、アガーシャにはなれないって言って出ていってね、私どうすればいいの、アガーシャ」
思いつくままに喋ってたら訳分からない日本語になっちゃった。通じるかな。
アガーシャはうーん、と唸り、私に言う。
「そんなことがあったのね……アリスも緊張していたのかもしれないわ……」
確かに……アリス、緊張していたのかも。それがヴァイオレットの目には無理してるように映ったのかも。
「あのね、ティー。なんで私がアリスを次のリーダーに指名したか、わかる?」
……いきなり、何の話だろう?
「んーん、わかんない」
だって、アガーシャは何も言ってないもん。ただ次のリーダーはアリスって、それだけ。
正直を言うと意外だった。アリスは去年、あまり活発な方ではなかったから。どっちかというと引っ込み思案な感じ。アイドル活動だって、あの事がなかったらやってなかっただろうし。
私の分からないという答えに、「そう……」と呟くアガーシャ。そして、意を決したかのように、息を吸い込んだあと、言った。
「じゃあね、教えてあげる。皆がそれを理解できたら、きっと前みたいに仲良くなれるわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます