第47話

 盗賊たちが入り口をとじる。


(まずい...... 入り口を閉じられた)  


「突然、どうされましたアバロさま?」


「どうやらここに、ケットシーが入り込んだ。 皆探せ! 姿を隠しているぞ!」


 アバロが号令すると、盗賊たちは皆、剣を抜いてきりつけ、周囲を確認し始めた。


(ばれた!? なんで! いや今は抜け出すのが先決)


 ぼくは猫足鎌ポーシクルをつくると、伸ばしてこむぎに巻き付けた。


「こむぎ上だ!」


「ピィ!!」


「あそこだ!!」


「ピィィ! ピーーー!!」


 屋根にこむぎは氷のつぶてを放った。 


 ぼくは猫足鎌ポーシクルを伸ばして屋根を突き破ると、そこに引っ掛かけ短く引き戻し屋根へと逃れた。


「皆さん! 魔法使い三人です!」


「了解した!! 皆行くぞ!!」


 大声でつたえると、ブレストさんたちは扉を破壊して、建物へなだれ込んだ。


「こむぎはここでまってて! もし外に逃げようとしたものがいたら凍らせて!」


「ピィ!!」


 こむぎにそう伝えるとぼくも降りた。


 下は乱戦となっていて、押されていてかなり分が悪かった。


(人数差はそれほどないのに...... あいつらか!)


 魔法使いが後方で三人ならび、魔法で盗賊たちを援護していた。


「ただ攻撃を受けないように周りに盗賊がまもらせているな。 猫足鎌ポーシクルだと、周りの盗賊が邪魔で一撃では倒せない...... 気づかれたらこちらに魔法を放ってくるし」


(一撃で倒す方法...... あれを試すか、今のぼくの魔力なら可能なはず)


 ぼくは魔力を高め魔晶剣を膨らませ柔らかくした。


「なんだあれは!?」


「気づかれたか!!」


 ぼくはその長い棒を、横にふりかぶるとおもいっきり振り回す。


(インパクトで固める!)


「【猫尾槌】《テールハンマー》!」


 大きく柔らかい猫尾槌テールハンマーは尻尾のようにしなり、盗賊ごと魔法使いたちを吹きとばした。


「がはっ!!」


「ぐあっ!!」


「よしできた! 途中で固められた! 魔法使いは倒しました! 今ですブレストさん!」


 ぼくはブレストさんに声をかけた。


「よし! 魔法がやんだ! 今だ突っ込め!! ガオオオオオン!!」


 ブレストさんの咆哮が響くと、前衛の盗賊たちは倒れ、 その隙に接近すると次々と倒していった。


 

「どうでしたか?」


 ぼくは屋根からこむぎをおろして、ブレストさんに聞いた。


「ああ、盗賊たちはとらえた。 外に逃げようとしたやつもこむぎに凍らせられていたよ」

 

 ブレストさんがそういってこむぎを撫でた。


「すごいね。こむぎ」


「ピィィ!」


 こむぎは胸を張った。


「ただ、魔法使いたちの姿がみえん」


 リエルさんが悔しそうに言うと、スクワイドさんは首をかしげる。


「逃げられましたか...... でもどうやって」


「......ああ、姿を消す魔法でももっていたのかもな。 ただこれで盗賊たちの全容がわかるかもしれん」


 ディーラーさんがそういう。


(だけど、気になることはある......)


 ぼくは曇り空をみて不安な気持ちになった。



「よくやってくれたトール」


 城に呼ばれ、サイゼルスさまがそう笑顔で向かえてくれる。 あれから一月もたたず、傭兵たちによって各地の盗賊たちは捕縛された。


「とらえたものから、芋づる式で盗賊どものアジトを制圧できたぞ。 傭兵たちにも恩賞を与えねばならんな」


「そうですね......」


「どうした? パン屋になにか問題でもあるのか」


「いえ、パン工房は完成が近いです。 でも魔法使いは捕まえられなかったのですよね」


「まあな...... 盗賊たちを捕縛したが、エクロートとのつながりを確実とする証拠もつかめなかった」


「捕まえた者たちは、お金で雇われた元他国の傭兵だ。 魔法使いだけは見つからないな」


(やはり......)


「しかし、盗賊は壊滅させた。 もはや魔法使いだけならば脅威もあるまい」


「いえ、そうとも限らない......」


「どういうことだ?」


 ぼくはサイゼルスさまに気になっていることを話した。



「それでサイゼルスさまはどうされると?」


 城からでてブレストさんたちと合流する。


「ええ、盗賊は倒したので、エクロートの攻勢に備えて国境へと兵を配置転換しているそうです」


 兵たちが城からでていく。


「まあ、そうですね。 隙を与えず攻めさせないのが一番ですしね」


 スクワイドさんがそれをみていった。


「うむ。 奇襲も防げよう」


「そうだな」


「それなら、俺たちは深域のモンスター退治か」


「ええ、まだモンスターがいますから、お願いします。 ぼくはパン工房で仕事しますよ」


「わかった。 なにかようがあればまた言ってくれ」


 そういうとブレストさんたちは去っていった。


「さて、こむぎ......」


「ピィ」


 ぼくたちは再びあの場所へと向かった。

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