第46話

「ここですか」


 そこは草がぼうぼうにはえた広い場所だった。


「ああ、元々ここには町があったがな。 モンスターの増大で住民は追いやられた」


 そうディーラさんが伸びている細い木をきっている。


 確かによくみると、草むらのなかに崩れた木造の建物が散見できる。 足下も石畳だった。


「それなら、ここに店をたてますか。 あと離れたところに畑もあればいいな」


「まずは、新しく結界魔法の魔鉱石をおきます。 弱いモンスターならば近寄ることはなくなりますから」


 スクワイドさんはそういって町の四方に魔鉱石をおいた。


 ぼくは魔力を流して結界をはる。


「よし、これで大工等をこちらに呼べるな」


 リエルさんが草をぬいている。


「ええ、でももう少し強めのモンスターを倒しておきましょう」


 ぼくたちは何日かかけて、強いモンスターを排除した。



「これで店のほうはなんとかなるとして、あとは盗賊ですね」


「ああ、各町に現れ商人などを襲撃しているな。 神出鬼没で手におえん。 こちらの動きを読んでいるようだ」


 困ったようにブレストさんはいった。 


「あの盗賊たちの正体は?」


「ああ、金で雇われた傭兵や元兵士だな」


「やはりエクロートか......」


「それが仮にわかってもこちらからは手出しできん。 バルチアから非難の声明をだしたらしいが、関知していない一点張りだそうだ」


 リエルさんそう憤慨している。


「まあ証拠がないんじゃ、勝手にやったことと逃げられますね」


「ああ、したたかなことだな」


 ディーラさんは不満そうにいうと、スクワイドさんも続けた。


「ですが、彼らがこの領内で暗躍していることは間違いありません。 他の盗賊たちもおそらく......」


「ですね。 なんとか見つけられないかな」

 

「そうだな...... おそらく本国とやり取りしているはずだが......」


 ブレストさんも考えている。


「エクロートとどこかで接触している...... どこだろう?」


「もし亜人を雇って使っていないのなら、エクロートのものは人間だろうな」


「ならば人間たちが多い町か......」


「捕まえたものたちも全て人間だった。 亜人を雇っているとかはなさそうだな」


「それならリブレアの町か。 あそこは亜人より人間たちが多い

この領内でも珍しい町だ」


 ブレストさんたちはそう話している。


「では、その町を調べましょう」


 他の町へも傭兵たちを分散させて警護させ、ぼくたちはリブレアの町へむかった。



「あまり豊かではないようですね」


 ぼくたちはリブレアにはいる。 多くの建物が補修もされず壊れたままだった。 人々の顔はくらく覇気もない。 町全体を陰鬱な空気が包んでいた。


「......そうだな。 元々、他の国や領地で居場所のないものたちが集まりできた町だ。 産業もなく、あまり裕福ではないな」


 ブレストさんがこちらを怪訝そうにうかがう人たちをみて、そういった。


「不満がある...... か、当然だけど」


「だが、我々に話をするかな」


「そうだな。 亜人への警戒感は強そうだ」


 ディーラさんとリエルさんはそういった。


(確かに、目を合わせようともしないし、話を聞けるような雰囲気でもない...... それなら) 


「取りあえず、魔力感知で人が集まっているところをみます。 盗賊も食料や休むところは必要でしょうから」


「おいおい、小さいとはいえ町だぞ」


 ぼくは目を閉じ、周囲の魔力を調べる。


(盗賊たちは魔力の宿る武具を身に付けていた。 それなら魔力を使えばみつけられる」


 ぼくは魔力で町全体を調べる。


(これは......)


「いました...... 奥に魔力の武具をもつものたちと、魔力の高いものが複数、このずっと奥にある建物です」


「本当ですか...... 驚いたな。 どんな感知能力ですか」


 スクワイドさんが驚いている。


「しかし、魔力の高いものってのが気にかかる」


「多分、魔法使いだろうな」


「とりあえず調べましょう」


 ぼくたちは奥へとすすむ。 そこには倉庫らしき建物があった。


「あれは倉庫か。 トール何人いる」


「十六人ですね。 ぼくとこむぎは姿を消せますから、中から調べてきます」


「わかった。 無理はするな。 もし見つかったら声をあげろ」


「はい、いくよ。 こむぎ」


「ピィ!」


 ぼくたちは姿を消して人の出入りと共に倉庫に忍びこむ。



 乱雑におかれた袋や箱がおかれた倉庫の暗がりのなか、魔力を感知してすすむ。 


 中央にすこし灯りがあり、男たちが話している。 おかれた箱に隠れてみる。


「どうやら警戒度があがっているな...... 襲撃がすすまない」


「ああ、傭兵どもを雇って対応している。 だから城の兵力を引き剥がせてはいない」


「このままではらちが明かない...... 無理やり目的を進めるしかない」


 そう杖をもった者たちが、話をしていた。 おそらく魔法使いだろう。


(目的...... 他に目的があるのか)


「アバロさま......」


 そう一人が慌てるように外から入ってきて、魔法使いの耳元でなにかをつぶやいている。


「なに...... すぐに入口を封鎖しろ!」


 アバロと呼ばれた魔法使いはそう命じた。

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