第45話
「ふぅ、十年ぶりに堪能したわ」
そう満足したような王女と、サイゼルスさまはグッタリ疲れはてている。
「......くっ! 相変わらずむちゃくちゃだなアシュテアは......」
あきれたように言うが、尻尾をフリフリしながら、サイゼルスさまはいう。
「それでサイゼルスが、なぜここに、上空飛行の許可はくれるの」
「ああ、ちゃんと許可はだした。 トールに深域のモンスターを倒してもらったからな。 家臣も民も説得できよう」
「そう! やっぱりトールね! ごほうびにもふってあげるわ!」
手をわきわきしながら王女はいった。
「遠慮します!」
「ちっ ......まあいいわ。 それでサイゼルス、わざわざもふられにきたの?」
「ちがう! エクロートの件だ」
「エクロート...... またちょっかいかけてきてるの」
「ああ、やはり徴兵や武器の購入などをおこなっている」
「こちらが伝えた通りね」
「えっ? でも友好国が攻めてくるなんてないでしょう」
「......そうとも限りませんね。 一応ベライドはバルチアの領土なんですが、この国は各領主の自治を認めています。 だからその辺の曖昧さをついて攻めてくる可能性もあるでしょう」
そうリディオラさんが説明してくれた。
「自治領だから攻撃的されるということですか?」
「そういうこと、自治領との戦いで領地を奪われても、領主の承認があって、支配権を主張されたら取り返すのは難しい」
「なるほど、じゃあ自治領からの要請で援軍を送ればいいのでは」
「ええ、でも、今私が指揮できる兵数には限りがある。 他の領主に
送らせるしかないけど......」
「亜人をよく思わない領主は兵をだすことを拒むだろう」
そうサイゼルスさまは腕を組む。
「そうか、だから今狙っているのか...... じゃあ、あの盗賊たちって」
「もしかしたら、動揺や兵力の分散を狙って、エクロートが起こしたことかもしれぬな」
「それで魔法使いまで...... ガルバインさまなら兵を、だしてくれるのでは」
「ガルバイン領はサイゼルス領とは遠すぎるわね。 あとはここの兵ぐらいだけど」
王女はすきあらばサイゼルスさまをもふろうとしている。
「ここの兵を減らすとダルタニアが攻めてくるかもしれません」
リディオラさんが王女を牽制している。
「それも加味しての行動かもな」
サイゼルスさまがそういって目を閉じた。
「取りあえず、兵を集めるわ。 エクロートも私たちと全面戦争はしたくないはず、その間にサイゼルスは兵力の増強をなさい」
「命じてはいる。 しかし圧倒的に人員が足りない。 エクロートからの防衛、領内の盗賊やモンスター対応にもまともに人員がさけず、被害から経済的におちこんでいるのだ」
「......そうね。 こちらが動かせるのは」
ぼくのほうをチラリとみる。
「まってください! ぼくはパン屋の仕事が!」
「戦争になればそれどころではないでしょう」
「それは......」
「すまないが、トール。 力を貸してはくれぬか」
「......でも」
「それなら、パン工房をサイゼルス領内でつくればいいのよ」
いつものように王女は無茶を簡単にいってのける。
(勝手なことを...... でも確かに戦争になったら、こむぎたちも危険になるし、各地にパンを食べてもらいたいという気持ちもある)
「ピ?」
「わかりました。 でも少しこむぎのことがあるのでグミナスさんと話してからでいいですか」
「ええ」
ぼくはその話をうけることになる。
「よう! すぐ会えたな!」
ブレストさんたちが手をふっている。 二週間後、ぼくはベライドにきていた。
「ええ、またお力をお借りします」
「ああ、任せろ」
ぼくはこの前ヒュドラを倒した深域に店をかまえることにした。 そこでブレストさんたちに、更に傭兵を集めてもらっていた。 お金は王女からだしてもらう。
「まだモンスターがいるから、それを排除して場所を確保しましょう」
「それはいいが、こむぎは大丈夫なのか、守りながら戦うつもりか」
「いえ、大丈夫です」
「ピ!!」
こむぎはブレストさんたちに答えるように羽ばたく。
「きます!」
奥から、大型の蜂の群れが現れた。 傭兵たちは苦戦しているようだ。
「アイアンビー! 金属の外皮をもつかなり硬いぞ! 一度引くか!」
「いえ、皆さんはなれてください! こむぎ!」
「ピィピィピーー!!」」
皆が散開すると、こむぎは胸を張り、口から吹雪のような冷気を吹き付け、モンスターを次々と凍らせていく。
「おお!! 氷の魔法か!」
(よし! こむぎも戦える。 グミナスさんの言っていたとおりだ)
「こむぎを戦わせる!?」
『ええ』
そうグミナスさんは話した。
ぼくがこむぎのことを話しにグミナスさんに相談したからだ。
「でも、戦うなんて......」
『その子はゴールデンバードの特性である魔法の模倣にたけているようです。 姿を消す魔法もすぐ習得していたでしょう?』
(そういえばぼくのことを見てて覚えたとか......)
「......やれるか、こむぎ」
「ピィ!!」
こむぎは自信ありげに跳び跳ねた。
『では私が何か教えてみましょう』
それから一週間かけ、こむぎは氷の魔法を習得した。
(これでこむぎは自分を守れるな)
ぼくたちは更に森へとはいって、モンスターたちを倒していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます