第44話
「ふぅ、なんとか城までこれたな」
サイゼルスさまが椅子に座り息を吐いた。
「お主たちには感謝する。 ヒュドラ退治のみならず、盗賊の捕縛も行えたゆえな」
「いえ、トールのお陰です。 リーダー格の魔法使いがあのままではじりじりと削られたでしょう。 しかしいつの間にか魔法使いは消えていました」
そうブレストさんが悔しそうにいった。
「まあしかたあるまい」
「かなり強く叩いたんですけど......」
「トールあれは姿を消しておったのか」
「ええ、こむぎたちと共に姿を消して、分身を使いました。 魔法使いは詠唱に気を取られていたので......」
「魔力も消すとはな...... 魔鉱石か」
「ええアシュテア王女からもらったんです」
「ほう、そんな高価なものをもらうとは、よほど信頼されているのですね」
そう驚いたようにスクワイドさんがいう。
「......そうか、信頼するものがリディオラ以外にもいるのだな。 よかろう約束通り、ゴールデンバードの上空通過は認めよう」
「ありがとうございます!」
そうサイゼルスさまから許可をもらうことができた。
「ではまたな」
「はい、ブレストさんたちもお元気で」
ブレストさんたちに最初の町までおくってもらい別れた。
「さて、馬車を借りるか」
「そうだな。 あそこにちょうどある」
そうアスティナさんがいう方向に馬車があった。
「王都にいきたいんですけど? 二人とちょっと大きめのこの子でいいですか?」
「ピィ!」
馬車のおじさんは一瞬こむぎをみておどろく。
「ちょっと大きめ...... あ、ああ、でも乗り合いになるよ。 いいかいお客さん」
そう後ろの荷台の客に聞いた。
「かまわない......」
そう後ろから聞こえて、ボクたちは荷台にのると馬車は出発した。 こむぎはおとなしく座って、さっきかったルクサを食べている。
「さて、これで帰って王女に報告するだけだ...... アスティナさん、そんなもの持って帰るんですか? 門の兵士も引いてましたよ」
「当然だろ。 ヒュドラの研究で不死や再生の魔法の秘密がわかるかもしれないんだぞ」
そういってモゾモゾ動く袋を大事そうにだいて、アスティナさんはルクサを食べている。
「でも、前のと違って毒をはくし......」
「大丈夫だ。 毒袋は胴体にあるから、こいつは毒も吐けない」
「でもいつか再生してくるんですよね」
「ああ、ただ胴体がくっついた時みたいにすぐ再生はしない。 首からゆっくりと再生するんだ。 その前に研究を終えて、不死化をなくせれば倒せる」
「逃がしたりしないでくださいよ」
「わかってるよ」
しばらく馬車に揺られていると、王都がみえてきた。
「ピィ!!」
馬車から降りて解放されたので、こむぎははしゃいでいる。
「じゃあわたしはかえるよ」
そういってアスティナさんは森のほうに向かっていった。
「さてと、報告にいくか」
城のほうへ向かうとさっき馬車で乗りあったフードの人が後ろにいた。
(なんだろう...... この匂い。 さっきまでルクサの肉の匂いでわからなかったけど、嗅いだことがあるような香水か...... 確か)
「城にいかないのか」
そうフードの人はいった。
「あっ!」
思い出すと同時にその人はフードをとった。
それはサイゼルスさまだった。
「なんでサイゼルスさまがここに!!?」
「領主が王女に会いに行くのはおかしくはないだろう?」
「それはそうですけど......」
「少し話があってな。 家臣たちは必要ない。 トールが案内してくれ」
「はぁ、わかりました」
「ピィ?」
ぼくは仕方なくサイゼルスさまを連れて城へ向かう。
「昔いたときとそれほどかわらぬな」
そうサイゼルスさまは周囲を懐かしそうにみている。
「ここにいらしたんですか? そういえば王女と幼馴染みとか」
「ああ、八つまではな。 父が戦で死に領主となったため、領内に戻ったのだ」
「戦、戦争があったんですか」
「そうだ。 エクロートとな。 今と違って当時バルチアとエクロートとは戦争状態でな。 そこで隣接する我が領内に侵攻してきた」
(それなら警戒するのも当然だな)
ぼくたちは城へとはいり、王女の部屋へと通された。
「サイゼルス......」
アシュテア王女はサイゼルスさまをみて言葉をうしなう。
「アシュテア......」
(相性が悪いって言ってたけど険悪なのか)
「まずい!」
リディオラさんがいうと、王女はサイゼルスさまに飛び付きなで始めた。
「や、やめろ! アシュテアくすぐったい!!」
「ああ!! この肌触り最高!! サイッコー!」
王女はサイゼルスさまをもふり倒している。
「はぁ、やってしまった」
リディオラさんは手で顔をおおっている
「これはどういうことですかリディオラさん!?」
「......王女は、もふもふ大好きでしょう。 サイゼルスさまにあえばこうなることになるので、会うことは控えていたのです。 何せ相手は領主ですからね」
「そういう相性の悪さだったのか」
「や、やめろ、やめないかアシュテア!」
「いいじゃない! 子供のころはいつもさわらせてくれたじゃない!」
「わたしは領主だぞ。 あっ」
そうもふられているサイゼルスさまの尻尾もすごいふられている。
(そういいながら、めちゃくちゃ喜んでいる)
そのもふりは夕方になるまで果てしなく続いた。
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