第43話

「本当にこっちか、俺の鼻でもわからんが......」


 そう鼻をひくひくさせてブレストさんがいう。


「ええ、イビルモンスターの魔力を感じます」


(こむぎを探すとき、魔力を放出して探知することを覚えたからな。 かなり広範囲まで索敵できる...... それにしても大きいな)


「このヒュドラ、前のより強いかもしれません......」


「そうか、気を引き締めていこう」


 サイゼルスさまがいい、ぼくたちはヒュドラの近くまでいく。



「あれか......」


 そこには前より巨大なヒュドラがいた。


「あれはヒュージヒュドラだ。 より硬く、そして毒をはく」


「なるほど、我が兵たちが逃げ帰るわけだな」


 サイゼルスさまの言葉にブレストさんがうなづく。


「こいつは確かに厄介だ」


「まさか、毒もちとは......」


「毒ならば、私が、毒を中和する魔法を使える」


 アスティナさんが魔法を使ってくれた。 体に光の膜ができる。


「ただ、許容をこえる毒を受けるとその膜が破れるから気をつけろ」


「わかりました。 ありがとうございます」


「では、皆で攻撃、首は私がきる。 お前たち耐性魔法を付与しろ」


「はっ!」


 サイゼルスさまが護衛に魔法を使わせた。


「これは物理耐性、魔法耐性、精神耐性の魔法だ。 かなりの軽減ができる」


「ではいきますかな」


 ブレストさんたちが散開して先行した。


 ヒュージヒュドラがこちらに気づいた。


 九本の首がわかれて伸びる。


 魔力を魔晶剣に流して長い剣をつくる。


「硬い!!」


 迫ってくる首に爪できろうとするが、弾かれた。


「なんだこのかたさ!! 前のヒュドラの比じゃない!」


「矢も刺さりません!」


「ああ押さえるのがやっとだ!」


「首をきるどころじゃないぞ!」


 皆硬さに苦戦しているようだ。


「アスティナさん! 何かわかりませんか!」


「確か...... 鱗は衝撃に強いが、簡単にはげた! それに再生が遅い!」


「わかった! 【猫爪籠手】《クローガントレット》」


 ぼくは巨大な爪のように魔晶剣をかえ、分身を二体だすと、鞄の中にあった予備のナイフを分身にわたした。


「ぼくが剥ぎ取りますから! 皆さんは攻撃を!」


「分身か! よし! トールは中央を頼む!」


「はい!」


 ぼくはヒュドラをかわしながら中央の首に近づき、鱗をはがしていく。 確かに鱗は再生が遅い。


「よし! あとは任せろ! たなびく風よ、我が体にまといて、切りさけ。 オーバーウィンド!!」


 サイゼルスさんの剣が風をまとい、疾風のように高速で突っ込むと、ヒュドラの鱗のない首を切り裂く。


「ギャアオオオ!!」


 そう地面にヒュドラの首は地面におちた。


「すごい!! 鱗をはいだとはいえ一太刀なんて!」


「サイゼルスさまは魔力量も高いようだな!」


 ブレストさんが感心している。


「よし!」


 アスティナさんが落ちたヒュドラの口にものをつめて確保した。



「なんとかなったな」


 サイゼルスさまが汗をふいた。


「ええ、さすがサイゼルスさま。 これで深域を開拓できますな」


 ブレストさんがいう。


「それもこれもアスティナとトールがいたからだ」


 そういってサイゼルスさんがこちらをみた。


「いえ、さすがに前のようにはいかなかったですね。 皆さんがいてくれて助かりました...... これは!?」


「どうした?」


 複数の魔力が接近してきていた。


「何かが近づいてきます! これは人です! 周囲を囲むように近づいてきます!」


「盗賊か! こんなときに!」


 ディーラさんが斧をつかむ。


「こむぎ、アスティナさん姿を消して」


「ピィ!」


「ああ!」


 二人の姿を消させた。 


(まさか、あの魔法使いたちか...... それなら)


「近づいているのはわかっている。 でてこい!」


 そうサイゼルスさまがいうと、木々の間から黒ずくめのものたちが武器をもって現れた。 



「私を領主サイゼルスとしっての襲撃か!」


 サイゼルスさまはそう一喝する。


「またこいつらか! サイゼルスさまをまもれ!」


 ブレストさんは護衛にそういうと、強く槍をかまえる。


「やれ......」


 杖をもったものが命じると、前とちがい三層ほど、円になって迫ってくる。


(これじゃ前みたいに囲みは崩せないか)


「魔法使いに気を付けてください!」


 そういってスクワイドさんは空へとんだ。


「ああ、この前のようにはやられん!」


 リエルさんが剣をかまえ前にでた。 


(まず、あの魔法使いをなんとかしないと...... 一番後ろにいて詠唱している。 前にでてきた奴らの体が光っているから、物理耐性とかたかっているんだな)


 前のほうでブレストさんたちが戦っている。 かなり数の違いから苦戦している。 


(よし、いまだ!) 


猫頬髭槍ウィスカーパッドランス!!」


 複数の長い棒が猫のひげのように伸びた。


「ぐはっ!」


 後ろから魔法使いは吹き飛ぶ。


「なんだ!?」


 盗賊たちがざわついた。


「くっ!! ケットシー、いつのまに後ろに!!」

 

「崩れた! そこから攻めろ!」


 サイゼルスさまの声で崩れたところからブレストさんたちがなだれ込む。


「くそっ! ひけ!!」


 盗賊たちは散り散りに走って逃げていった。

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