第41話

 馬車をとめ、ブレストさんはそばの槍をにぎる。 

 

「走り抜けられないか...... トールたちはこの場にとどまっていてくれ」


 そういって馬車をおりた。


 リエルさんたちも、武器をもつとおりだした。 四人は四方をかこむ。


「一応、こむぎは姿を消していて......」


 そういうと、こむぎは姿を消した。


「アスティナさんもこれで......」


 ぼくはもっていた姿を消す魔鉱石を渡した。


「トールは」


「ぼくは最悪戦います」


 魔晶剣を握った。


 周囲を木々にか困れていて、隠れているようだ。


「隠れていないででてこい、といってもでては来ないな...... ガオオオオオッ!!」


 ブレストさんが咆哮を放つ。


「ぐあっ!!」


「がっ!!」


 そう何人か倒れる音がした。


(あれも魔法なのか...... 衝撃波かな)


 周囲から武器をもった者たちがでてきて、何本ものナイフが投げられた。


「そんなもの刺さるか!」


 リエルさんは前にでると、その体にナイフがあたるが、それはおちた。  


(すごい! 硬い体だ、鎧をきてないからおかしいと思ったが、鎧がいらないわけだな)


 スクワイドさんは空に飛ぶと弓をひいて矢を放った。 


「ぎゃあ!」


「ぐうっ!!」


 盗賊たちに何本か矢が刺さって倒れた。


(この人たち強いな。 どうやらなんとかなりそうだな。 いや、この魔力!)


「ガッ!!」


 そのとき、リエルさんが一瞬で凍りつく。 奥に一人、杖をもったものがいた。 更に詠唱をしている。


(すごい魔法だ! リエルさんが凍った!! ただ連発はさすがに無理か!)


「かなり強力な魔法をつかうやつがいる! 気をぬくな」


「あいつだ! あの杖のやつだ」


 ディーラさんが両刃の斧をふりまわしているが、盗賊に邪魔されて前へと進めていない。


(これは仕方ないな......)


 ぼくはおりると馬車の上にのった。


「おい! でたらあぶない!」


 ブレストさんが叫んだ。


「大丈夫です!」


 ぼくは馬車のなかから分身をだしていた。


「落ち着け。 ただの傭兵だ。 焦らずかこめ」


 そう杖をもつものが威圧的な低い声をだす。 相手は円形に囲み逃げ場がない。


(陣形...... やはりあいつがボスか)


 分身は、渡していた伸ばした魔晶剣を回転させふりまわした。


「がはっ!!」


 棒は何人かにあたり円の陣形をくずした。


「皆さんいまです!」


「わかった!」


 ブレストさんたちは崩れたところから攻撃をしている。 かなりの盗賊が倒れた。


「くっ、退却......」


 そう魔法使いの声がすると、盗賊たちは離れていった。



「......ふぅ、助かった」


 スクワイドさんが治療の魔法を使い、リエルさんが凍結からもとに戻る。


「助かったよ。 トール」


「まさか依頼主に助けられるとは」


 そう頭をかいて、ディーラさんがいった。


「かまいませんよ。 あの人数にあれほどの魔法使い、この人数ではしかたない。 あんなに盗賊って強いんですか」

 

 スクワイドさんたちが捕縛してる盗賊たちをみてきいた。


「いいや、強すぎるな......」


「本来はただの武器をもった素人だ。 だが今回のは訓練された者のようだった」


「人数も多い。 しかも魔力の宿った武器をもっていた。 少なくとも大きな資金をもつ組織だな」


「それに盗賊に魔法使いなんていないですね」


 四人はそういって困惑した顔をした。


(どういうことだ...... なにか狙いがあった。 ぼくか? 王女の親書、いや、これはただの手紙だ。 正直奪うほどの価値はない。 こむぎ、ゴールデンバードかも...... 連れてくるべきじゃなかったか)


 ぼくは馬車でパンを美味しそうにたべているこむぎをみる。


「まあ、こいつらを引き渡せばなにかわかるかもな」


 そうブレストさんは捕縛したものたちを荷台にのせた。


「すまないな。 荷台が盗賊で一杯だから」


 ブレストさんがあやまった。 ぼくとスクワイドさんは馬車の屋根に乗っていた。


「構いませんよ。 風も気持ちいい」


 それから馬車に揺られて、サイゼルスさまの城があるというルグエイダについた。



「ありがとうございました!」


「こちらこそ、助かった。 割り引きしたいぐらいだ」


 ブレストさんたちは笑いながらそういう。


「さて、俺たちはこいつらをギルドに連れていく」


「また、何かあれば話を通してくださいね」


「じゃあなトール」


 ブレストさんたちとわかれて、遠くのみえる城へと向かう。


「気のいい連中だったな」


 そうアスティナさんはいった。


「そうですね。 それにしても盗賊の狙いが...... ぼくたちはどうみても商人でもないし、もしかしたらこむぎなのかと......」


「そうだな。 確かにゴールデンバードはかなりの魔力をもつ、狙われてもおかしくはないが...... それならこむぎのことをどうやって知ったんだ?」


 アスティナさんはそう首をかしげる。


「ですよね。 歩いているのをみられたとか...... まあ、帰り気を付けましょう」


「ピィ?」


 とりあえず、ぼくたちは城へと急いだ。

 

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