第37話
「あれですね......」
森の中、一際大きな黒い魔力をおってきた先にそれはいた。 九つの頭をもつが体は一つの大きな蛇だ。
(なんかモゾモゾする...... 蛇...... やだな)
「九の頭をもつ蛇、あれはヒュドラだ...... あきらめよう。 帰るぞ」
「ヒュドラ、どんなモンスターですか......」
「再生能力が高く切っても再生する。 しかも真ん中の首は不死だ。 手に負えるしろものじゃない。 騎士団くらいの戦力が必要だ」
そうアスティナさんは帰ろうとする。
(確かに中央の首だけすごい魔力だな。 不死...... 試してみるか)
「おい! なにする気だ!」
「まっててください。 試してみます!」
ぼくは跳ねるように木々を蹴りとぶと、ヒュドラは何本もの頭を向け噛みつきに来た。
剣の鞘を蹴り空中で移動して、頭をかわすと、抜いた剣で首を切りつけ地面に着地した。
「ギャアッ!!」
首をはねると切ったところから、モコモコと首が生えてきていた。
(なるほど再生が早いな。 でもきれる!)
襲いくる首をかわし近づくと、魔晶剣に魔力を通し、猫の足のようにした。
(ガルバイン領内で使ったものを改良した【猫足鎌】《ポーシクル》だ!)
無数に迫る首が迫ると、柔らかくした肉球を地面に叩きつけ、棒高跳びのように反動でとぶ。 そして空中から
「ギャオオオオ!!」
真ん中の首が跳ぶと体は動かなくなった。 しかし地面に落ちた真ん中の首は体に戻ろうと動いている。
「逃げる!」
それを動けないように首に剣をつきさした。
「な、なるほど、不死の首を切りおとしたのか。 お前時々ムチャをするな......」
あきれたようにアスティナさんはいう。
「不死なのは首だけなら、首だけ切り落とせばそれ以外は動かなくなると思って。 それでこれどうしましょう。 すごく気持ち悪い......」
動いている首をみていった。
「......そうだな。 口になにかつめて持って帰ろう。 調べればなにかわかるかもしれない!」
「ええぇ......」
鞄からパンを包んでいた袋をヒュドラの口につめると、アスティナさんは、急いでヒュドラを持ち帰っていった。
「さて、ぼくは残るモンスターを倒すか」
それから、モンスターたちを倒していった。
「もう、暗くなったな。 かなり倒したから、明日にでも開拓のために人にきてもらうか」
帰り道向こう側の山の上に月がみえた。
(あの方向にこむぎがいるのか......)
そうぼんやりみていると、高い魔力を感じる。
「なにか近づいてくる大きな魔力! でもこれは......」
こちらに急接近する大きな影がみえる。
それにぼくは走りよると、大きな影は降りてきた。
「やっぱり...... グミナスさん!?」
『トールさん』
それはゴールデンバードのグミナスさんだった。
「どうしてこんなところに!? まさか!!」
『はい、少し目を離した隙に、あのこがいなくなったのです......』
「そんなこむぎが!」
『ですが、どこにいったかわかりません。 あなたのところに向かったのかとこちらにきてみたのですが...... 道中にはいないのです』
「グミナスさん、のせてください!」
『はい』
ぼくはグミナスさんにのって、飛び立った。
「それでいついなくなったんですか!?」
『四日ほど前です。 ですがおそらく視認できません』
「どう言うことですか!?」
『あのこは最初はおとなしくしていたのですが、度々逃げ出そうとしたのです。 その度に捕まえ戻しました。 ただ今回はみてる前で消えたのです』
「消えた!? なにかそういう特性でもあるのですか!」
『ええ、我々は認識した魔法を模倣できるのです。 あのこの前でそのような魔法を使いましたか』
「あっ! ええ、姿を消す魔鉱石をつかいました......」
『おそらくそれですね。 それで姿も魔力も感じない...... 見つかれば連れ戻されると思っているのでしょう』
「ぼくの店からゴールデンバードの住処まで、一直線に飛んでくださいお願いします!」
『はい!』
グミナスさんの背にのり山まで向かう。
「四日ほどでどのくらいすすめるとおもいますか!」
『おそらく山を降りて中間までいければ、しかし目に見えない魔力も感じないものをどうすれば......』
グミナスサさんも焦ってるようだ。
(それならここから山までか......)
「そのまま旋回してください」
旋回しているとき、ぼくは魔力をためる。
(姿や魔力を消せるとはいえ、少しは感じ取れるはず...... ぼくの魔力探知を最大まではなてば!)
「ぐうぅ!!」
魔力を放出して辺りを痕跡をさぐる。
『すごい魔力! これは!!』
森、川、モンスター、鳥、魚、虫、辺り一帯の生物を感じる。
(いない! もっとだ! もっと魔力をはなて!)
「ぐぅぁぁぁぁ!!」
『トールさん! あなたの魔力がどんどん流れ出ていっています! それ以上魔力を放つと死んでしまいますよ!』
「も、もう少し......」
地上にかすかな魔力反応があった。
(この魔力の感じは覚えがある......)
「あ、あそこ、あの丘のところ......」
グミナスさんはそのまま旋回してその場所へと降りた。
「あっトールさん、まだ!」
ぼくはその背から落ちた。
「こ、こ、こむ、ぎ、こむぎ......」
「ぴ、ぴぃ......」
かすれた声がすると、ぼくの目の前に、倒れた泥だらけのこむぎが姿を現した。
「こむぎ......」
ぼくはなんとかはって進む。
「ごめん、ごめん、ね......」
その泥だらけの体に触れる。
「ぴ...... ぴぃ」
倒れていたこむぎの目から涙がこぼれた。
ぼくはこむぎを抱くと、そのまま意識を失った。
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