第33話
「でもこれからどうします」
ぼくたちは町の外にいた。 目の前には大きな森がみえる。
「俺は妹に会いたい。 いや会わねばならない」
「それなら王都ですが、このまま森をぬける間に追撃があるかもしれませんね」
「だな。 しかし街道を行くと、馬車を用意されれば、すぐさま追いつかれる」
「馬車か...... やってみるか」
「おい、なにをするつもりだ」
「みててください」
(魔力ならまだある。 足りればいいが...... もう分身も必要ない。 いける)
魔晶剣に魔力をこめ、形をイメージする。
「よし! できた!」
「これは!?」
魔力そのもので、ひとりのりの二輪の車をつくった。
「ガルバインさまが乗ってください」
「これをどうする? 馬などここにはないぞ。 それにお前はどうする? 残るというのか」
「それは......」
ぼくは四つん這いになり、二輪を引く。
(よし、いけるか)
「じゃあ、ガルバインさま、つかまっててください」
「うおっ!」
ぼくは四足で風のように駆け出した。
(何とかはしれる。 さすがにネコだ)
しばらくして町についた。
「はぁ、はぁ、なんとか町までこれました」
「ああ、馬よりはやかったんじゃないか。 さすがにこれは追い付けまい。 ここから馬を借りて王都にいこう」
ぼくたちは馬をかり王都へと向かった。
「なるほど、それでここに......」
アシュテア王女は玉座でそういい、ひざまづくガルバインさまをみている。 ぼくたちが城につくと朝になっていた。
「今ガルバイン領で兵を集めているという話です」
リディオラさんはそうぼくたちにいった。
「このままだと戦争になるわ。 ガルバイン、なんとかでていって説得できないの」
「無理ですね。 私がでていっても王女のつくった偽物だろうといわれればおしまいです」
(魔法があるから...... そういうことも可能か)
「......ですが、すぐ出陣は無理でしょう。 向こうも全員が真偽を図りかねているはず」
「それにしても、すぐ行動を起こすとは、まだガルバインさまがこちらにいるのに、探しもせずなど......」
リディオラさんが、眉をひそめた。
「おそらく私のかわりに何者かが画策しているのでしょう」
「しってるの?」
「おそらくは側近のダレスかと...... 私のかわりに兵に命を与えるのはあのものでしょう」
(部屋にはいってきたあの老人か......)
ぼくはつめたい目をしたあの老人の顔を思い出す。
「そう。 それで止める手はずは」
「ひとつだけ、妹にあわせていただきたい」
「いいけど、あのこは......」
王女は部屋へと案内してくれた。
その部屋では椅子に、じっと座っている青い目の少女、ミネルバがいた。
「ミネルバ......」
ガルバインさまはかけより頭を抱いた。 しかし反応はない。
「あれは......」
「......多分、最初は与えられた魔力で動いていたけどね。 止められたか遠いかね。 だから反応しない」
王女が腕を組みそういった。
「ガルバインさま、その魔法珠で魔法を打ち消せないんですか」
「無理だ...... これでは解呪できない」
「ええ、おそらく古代の魔法か、魔法具ね。 それでその子を元に戻せば、この戦争を止められるの」
王女がガルバインさまに聞くと、うなづく。
「ええ王家に伝わる魔法道具があります」
そういってガルバインさまは首からかけた中央に青色の宝石のついたネックレスをみせた。
「これを起動できるのは特殊な魔力をもつ母か妹、ミネルバだけ......」
「なるほどそれが【魔導の青宝玉】聞いたことはある......」
王女がそういった。
「それで本物と証明できるんですね」
「そうだ。 しかし...... この状態では魔力使用もできまい」
悲しそうにミネルバをみていった。
「それなら、ひとつだけ方法があるわ。 代々王家の墓に、魔法を封印する指輪【封魔の指輪】があるの」
「なればそれをお借りしたい!」
ガルバインさまは焦るように頼む。
「でも、あそこはモンスターの巣窟になって久しい、とても危険よ」
「それなら、ぼくもいきます」
「頼むトール」
「......仕方ないわね」
ぼくとガルバインさまは王家の墓へと向かった。
「ここか...... 確かにイビルモンスターだらけだ」
遺跡が目の前にある。 確かに中からかなり強く黒い魔力がうごめいている。
「ええ、王家に恨みのあるものたちの想念のようなものが、イビルモンスターになったのね」
「そうみたいです...... いや! なんで王女がいるんですか!」
後ろの木から王女が近づいてきた。
「二人だけだと無理だからよ。 ここは王家の魔法の鍵が必要なの」
そういって宝石のついた鍵を見せた。
「またリディオラさんにしかられますよ」
「......力をお借りします。 あなたの身は私が命を懸けて守ります」
ガルバインさまがひざまずきそういった。
「いいわ。 必ず忠誠を誓ってもらうからね」
王女はそういうと、前に歩いていった。
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