第29話

「うっ......」


 吹きすさぶ吹雪の中、こむぎとぼくとアスティナさんは山道を歩いていた。 この南の氷雪原【リグノーリス】。 ぼくたちはゴールデンバードの群れを探してやってきていた。


「大丈夫ですかアスティナさん」


「ああ、こむぎとお前の空気を操る魔鉱石と温度の魔法でなんとかな」


 王女からかりた魔鉱石と温度変化の魔法、そして、こむぎの後から歩くことで、なんとか寒さにたえてこの極寒の大地を歩いている。


「ピィ!」


「さすがにこの大地に生息するモンスターだな。 この寒さでもある程度は大丈夫そうだ」


 アスティナさんはこむぎをみてそういった。


「ええ、おかげでなんとかすすめますね。 他のモンスターもいない」


「この寒さにたえられるモンスターも人間もすくないからな」


(確かに視界すらない。 魔力で周囲の形を認識するのもやっとだ。 こむぎに頼むしかない)


「こむぎ、すまない道案内をたのむよ」


「ピィ!!」


 ぼくたちはなんとかこむぎをたよりに前へとすすむ。



「はぁ、ここでなんとか休憩しましょう」


 ぼくたちは山で見つけた洞窟で一時休憩する。


「そうだな。 こむぎの体力ももたん」


「ピィ......」


 洞窟に入り、もってきたライ麦と小麦からつくったパンを、魔鉱石の火力でやき、鍋でチーズも溶かす。 溶けたチーズと、香ばしいパンの香りが鼻にぬける。


「ピィ、ピィ!!」


「うまそうだ...... うまい!! やっぱお前のパンはすごいな!」


 アスティナさんはおいしそうに食べている。


「ありがとうございます。 すこし保存がきくようにライ麦も混ぜました。 ほらこむぎ」 


 ちぎったパンに鍋の溶けたチーズをつけ、こむぎにむけると、おいしそうに食べた。


「ぴぃ~」


(群れをみつけたら、こむぎとはお別れ...... それがこむぎの幸せなんだ)


 こむぎに寄り添い、柔らかな羽毛をさわる。

 

「ピィ?」


 その日はその洞窟で一夜を明かす。



「ふぅ、まったくいませんね。 そもそも魔力を隠せるなら見つけるのは難しいかも......」


 次の日も吹雪のなか群れを探す。


「ああ、文献にも群れの場所はわからない。 ただこむぎなら本能で仲間の場所がわかるかもしれない」


「そうか、こむぎなら」


「ピィ?」


(大丈夫かな......)


 こむぎを先頭に雪山を登る。  かなり歩く。


(もし、見つからなかったら、それなら...... それならもう)


「ピィ!!」


 その時こむぎが何かを見つけたように、足早に進んでいく。


「どうしたこむぎ?」


「いってみよう」


 ぼくたちは後ろをついていく。


 急に視界が開けた。 そこは吹雪がなく、青々とした樹木もありとてもきれいな場所だった。


「ここは......」


 後ろを振りかえると、後ろに吹雪がみえる。


「どうやら、魔法かなにかで空間を遮断しているようだな」


「ピィ!!」


 こむぎの声で上をみると、巨大ななにかが迫ってくる。


「アスティナさん!」


 アスティナさんを抱き上げ離れる。


 ドオン!!


 地面が吹き飛んだ。


「なんだ!?」


「あれをみろ!」

  

 空をみると巨大な金色の鳥が口から、つぎつぎ炎や氷を吐き出してくる。 なんとかそれをかいくぐった。


「あれはゴールデンバード!」


「でも攻撃してきます! どうしますか!」


「住みかに入った我々を敵だと思ってるのか!」


(戦うわけにも......)


 上空にはゴールデンバードたちが群れをなしておってきた。


「まずい! この数は!!」


「ピィ!!!」


 こむぎが前にでてくる。


「あぶない! こむぎ!」


 ゴールデンバードが嘴をひらく。


『まちなさい......』


 そう声が聞こえた。 いや声と言うより心に聞こえる。


「これは......」


「多分、魔力での念話のたぐいだろう」


 空の群れは攻撃をやめ、その間から一際おおきなゴールデンバードが現れ地上に降りてきた。


『そなたたちはなにようできたのです...... その子は』


 そうとても優しい声でゴールデンバードはきいてきた。


「あ、あの、ぼくはこむぎ、いやこの子の群れを探しにきたんです」


『こむぎ...... この子はもしや...... いいでしょう。 少しこちらに』


 そうゴールデンバードの長ーーグミナスさん、はいった。 グミナスさんから招かれ奥へとはいる。 そこはこむぎぐらいのゴールデンバードのヒナたちが多くいた。



『そうですか...... 人間の世界にあの子が』


 こむぎは同じゴールデンバードの少し小さなヒナたちと、おいかけっこをして遊んでいる。


『あの子は、おそらく外にでていったゴールデンバードの子供でしょうね』 

 

「外に......」


 ぼくとアスティナさんは顔を見合わせた。


『少し前に外に興味を持った一体のゴールデンバードが群れをでていきました。 その者は子を宿していたようです』


「それがこむぎの母親か......」


『それであなたたちは、あのこをここにかえしにきたのですね』


「ええゴールデンバードとぼくとでは寿命が違う。 このまま人間の世界でいきればこむぎは苦しむことになる...... それで、それで......」


 言葉につまる。 グミナスさんはそれを察してかうなづいた。


『......わかりました。 あのこはここで育てましょう』


 そうグミナスさんは約束してくれた。

 

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