第24話

「ぐあっ!」


 大きなモンスター同士のぶつかり合いに巻き込まれて、はね飛ばされ地面をころがる。


「くっ...... いたっ」


 足に痛みが走るが、なんとかたって森をすすむ。


(はやく、どこだ...... もっとよく感じろ!)


 魔力探知を最大で調べる。 魔力探知の範囲を拡げさらに精度をあげる。


(これはモンスターか...... モンスターじゃない生物の反応は...... 小さな生物はいる。 でも人じゃない...... どこにもない。 これは......)


 生物ではないが、なにか奇妙な魔力の反応がある。 わらをもつかむ思いで、その場所へ足をひきずって向かう。


「......そんな、なにもない」


 そこにはなにもない場所で、周りには樹木があるだけだった。


(でも、ここになにか...... 魔力の痕跡が)


 なにもない場所を触れて回ると、なにかがあった。 


「これは建物か! マフトレインさん!!」


 ぼくは見えないそれを叩く。


「やめろ! 叩くな。 モンスターに気づかれるだろ!」


 中から声がして、まぶしい光があたる。 中から14、15にみえる少女が出てきた。


「なっ!? ケットシー!!」


 その少女はぼくをみて驚いた。


「あの! マフトレインさんですか! ゴールデンバードのことを聞きたいんです!」


「ゴールデンバード...... 落ち着け...... まあなかにはいれ」


 そういって少女に建物の中に招かれた。


 

「ゴールデンバードが不調......」


 部屋には整理されてない本が乱雑におかれていた。 


「そうなんです! なにか薬かありませんか! お金はあとで払います! 診てやってくださいマフトレインさん!」


 気が気でなかったぼくはマフトレインさんにつめよる。


「落ち着け! まずはお前だ。 その足」


「足なんてどうでもいい! いまこむぎが! マフトレインさん!」 


「それに私はマフトレインじゃない、アスティナだ」


「えっ?」


「マフトレインは私のおやじだ。 いまはモンスターを調べにどっかにいってる。 癒せ、根源たる力よ、その慈悲なる心で、ヒール」

 

 そういうとアスティナさんは、ぼくの足になにか魔法を唱えた。 痛みがおさまる。


「じゃあ! アスティナさんでもいい。 こむぎを助けてください!」


 ぼくはこむぎがひなで食事を取らなくなって、更に羽毛がごっそり抜けていることを必死に説明する。


 アスティナさんはそれを黙ってきいた。


「......わかった」


「早く店まで来てくたさい!」


「......まずは薬草を探しにいくぞ」


 アスティナさんは鞄を手に取る。


「薬草...... 回復魔法じゃだめなんですか! それを使える人は高位の魔法使いだと王女から聞きました!」


「おちつけ、回復魔法は全てにきくわけじゃない。 薬草、今はそれが必要になる」


 すがるしかないぼくはうなづき、建物をでて森へはいる。


「それで薬草ってどんなものですか!! ぼくは魔力探知で探せる! いってもらえばすぐに!」


「落ち着け、その薬草は魔力が少ない。 探知で見つけるのは困難だ...... あせると見逃すぞ。 それに似た毒草もあって素人には無理だ」


 そういってアスティナさんは、焦るぼくはなだめた。


 とにかく、自分を落ち着けるため話を聞く。


「あの建物、一体......」


「あれはモンスターに認識されないように、魔鉱石で隠してるんだ。 見つかると壊されるからな」


「あんなところでなにをしてるんですか」


「おやじとモンスターの生態を調べている。 といってもおやじはモンスターを調べに旅に出ていっちまったけどな」


 そうアスティナさんは、木々の根のほうをゆっくりみてまわっている。


「......早く帰らないとこむぎが......」


 いてもたってもいられない。


「それはそうだな...... だからこそ、お前はよりこの事を深く経験する必要がある」


「えっ......」


「モンスターとはいえ、生態もしらず、生物をかえばそうなるということだ」


(確かに、早くこの人に会いに来ていれば...... でも今はそんなことを言っているひまはない)


「それはわかっています! でも......」


「大きな声をだすな。 モンスターにきづかれる。 この深域はモンスターの世界だ」


 口をつぐむ。


「せめて、どんな花かだけでも教えてください。 ぼくも探しますので!」


 するとため息をついて、アスティナさんが小さな青い花だという。


 ぼくはすぐに周囲の青い花を手当たり次第もってきた。


「全て違う」


 それをなんども繰り返す。 焦っていてモンスターに踏み潰されそうになりながら、必死に探す。


「あったぞ」


 アスティナさんがいうと、そこには蒼い小さな花があった。


「それじゃ、早く!」


「わかった。 まて...... えっ!」


 まてないぼくはアスティナさんをおぶり、そのまま駆け出した。


「まて、まて、まて! 話をき...... きゃあーーーー!!」


「まってろこむぎ!!」


 最高速で森を駆け抜ける。

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