第23話

「こ、これは」


 店にかえるとそこら中が、めちゃくちゃになっていた。


「す、すみません。 急にあなたの分身が消えて、こむぎさんが暴れまわったのです」


「いま、こむぎさんは暴れつかれて眠っています......」


 手伝ってくれた城の従者の人、アセムさんと、カインさんがボロボロでそういった。


 奥でいつも寝ているシーツを、ぎゅっと抱いてこむぎは眠っている。


(あの魔力放出で分身がとけたのか......)


「こちらこそすみません......」


 そうあやまり、二人を帰す。


「ごめん...... でも、お金は手にはいったし魔法も教えてもらえるんだ」


 そう眠るこむぎのそばにいき撫でる。



 次の日、リディオラさんが来た。


「お約束の魔法のスクロールです」


 そう巻物を見せてくれた。


「どう使うんですか?」


「拡げて魔力で文字を指でおってください」


 いわれたとおり机のうえに拡げて、そこにある読めない文字に魔力をこめて指でおう。


「わっ! 指でおったところが光って......」


(頭の中に文字が浮かぶ......)


 終わるとスクロールには、なにも書かれていない真っ白なものになった。


「これで土魔法【アースソース】がつかえます」


「よし! それなら畑にいきましょう!」


 畑へとむかい魔法を使ってみる。


「土よ、源たる力をつかい、その活力を再びよみがえらせよ、アースソース」


 畑が光ると周囲の魔力があつまり、土がかがやく。


「魔力が満ちましたね」


「ええ、周囲の魔力を土の栄養素に変換しました。 これで再び畑をつかえます。 それでこれはなんなんですか」


 そうリディオラさんは、ぼくが大工さんに頼んだ脱穀機を、不思議そうにみている。


「それは脱穀機です。 こうやって上に乗ってこのペダルをこぐと」


 椅子に座りペダルを足で漕ぐと、椅子の下の筒状のローラーが回る。


「おお! 回った! なるほど、これで麦の穂を当てて種子をとるのですね!」


「ええ」 


「これなら、あの脱穀も短時間で終わらせられますね」


 それから、畑に選別した種子を植えて、魔法をかけ麦を収穫し、更に選別を繰り返した。


 

「なんかすごい穂が小さいですね。 それに殻も薄い」


 リディオラさんは刈り取った穂をみていう。


「ええ、これで柔らかなパンができるはず!」


 早速試作品を作り出す。


「おお! これは!」


 かなり前に食べていたパンにちかい触り心地の柔らかさになっている。 


「すごい柔らかいです! ふかふかです!」


 リディオラさんが食べている。


「大分近い! なあこむぎも!」


 こむぎは奥のほうでぼくの分身をもって、目をつぶってじっとしている。


「えっ? どうしたこむぎ......」


「ピィ......」


 元気がない。 パンをあげようとしても食べない。 


(そういえば最近少し食が細くなってた。 太ってるから大丈夫かと思ってたけど...... もしかして病気!!)


 周囲をみると羽毛が塊で落ちている。


(こんなに羽毛が!? 気づかなかった!)


「リディオラさん! いますぐ王女にあえるようにしてください!」


「ふぁひ?」


 パンを頬張ってるリディオラさんをゆさぶり頼んだ。



「......ごめんなさい、私にもわからないわ。 ゴールデンバードは

南方の雪山にしかいなくて生態は詳しくないの......」


 次の日、城にいきアシュテア王女に聞いた。 王女も困ったようすで首をふる。


「で、でも、このままじゃ、今日もなにも食べてないんです! それに毛がすごく抜けたんです!」


「......そうね。 あの人なら」


「あの人......」


「ええ、モンスターを調べている学者がいるの。 名前は【マフトレイン】」


「そ、その人、どこにいるんですか!! 教えてください! 枕でもなんでもしますから!」


 必死に王女につめよる。


「ま、まって! えっと、北にノーズウッドという森に研究室があるわ」


「わかりました!」


「まちなさい! そこは......」


 王女が後ろから声をかけたが、ぼくは城をとびだした。


(ああ、ちゃんとみてれば、もっと早く異変に気づいたはずなのに! なんで! ほっといたんだ!!)


 後悔が胸を締め付ける。 だが今はそんなこと考えている場合じゃないと思い直し走る。


「この森か!」


 深い森を入っていく。 そこかしこに古い時代の折れた剣や鎧が落ちている。  


(ここ昔戦場だったって言ってたけど......)


 ぼくは異変を感じたちどまる。


「なんだこれ!? 毛が逆立つ!」


 焦っていて気づかなかったが、その森は強い魔力がひしめいていた。


(ここは深域か!) 


 深域は魔力が濃く、強いモンスターが湧くようにあらわれるという場所で、普通人間たちもいない。


「こんな強いのがいるのか...... でもマフトレインさんを探さないと! 魔鉱石で魔力と姿を隠せばいけるはず!」


 二つの魔鉱石をつかい、姿と魔力を隠して森を駆け抜ける。 視界に巨大なモンスターがうつる。 


(幻じゃない! なんでこんなにモンスターが!)


「どこだ!! そもそもこんな森に本当に人がいるのか......」


 焦って不安が思考を乱す。 


「なっ!」


 そう考えて集中をみだし、目の前にモンスターがいるのに気づかなかった。

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