第22話

 ぼくたちはそのまま海岸にきた。 岩礁に波が当たって白く弾けている。 晴れていて海もおだやかだ。


「では使います」


 ぼくが黄色の魔鉱石に魔力をこめると、光がぼくたちを膜がはったように包んだ。 


「この中なら呼吸ができますね」


「ええ! ですがこの大きさとは...... トールどのの魔力の大きさだからでしょうね。 普通は一人一人ぶんぐらいなのですが...... さすがです」


 そうリディオラさんは驚いている。


「さあ、入りましょう」


 ぼくたちは海へと入っていく。 浅瀬からより深くへと潜るようにすすむ。 海上から光が届き、魚たちが泳いでいてキラキラ輝き、その光景に歩きながらしばし見とれていた。


「あれ、おいしそうですね」


「ふふっ、そうですね。 トールどの魔力は感じますか?」


「はい、でも小さなものです。 魚たちや貝ですね。 それでここにいるそのモンスターはなんなのですか」


「それがみたものたちの話によると、まちまちなんです。 巨大なサメ、タコ、イカ、ウミヘビ、カメ」


「えっ!? そんないっぱい!?」


「ですが、モンスターは強いものに食べられてしまいますから、複数の強いモンスターが近くにいるとなると、なにか理由があると思います......」


「確かに、そうですね......」


 ぼくたちはより沖のほうへ深くへ潜っていく。



 しばらく潜ると海が暗くなってくる。 魚もまばらだ。


「かなり暗い、灯りをつけますね」


 ライトスフィアで照らす。 すると船の残骸があった。 どうやら周囲にいくつもある。


「おそわれた船のようです」 


「ん? なにか感じる......」

 

 船のひとつから何か強い魔力が放たれていた。


「これは古いですね。 見たことのない形です......」


 リディオラさんがそう言った。


 船内を探すと宝箱があり開けてみた。 すると小さな短剣があった。


「何かこれ、大きな魔力を感じる」


「......魔法道具ですかね。 昔の船ですし、今は魔法道具をつくれるものいません。 使えるかもしれないのでそれは手に入れておきましょう。 あとで王女に確認してもらえば、なんなのかわかるはず」


 リディオラさんがそういうので短剣をもっていく。 船からでる。


「トールさん! 危ない!」


 ぼくは突然リディオラさんに押された。


 横をなにか大きなものがとおった。 


「これは...... 魚か!」


 大きな魚が向こうにおよいでいく。 そして回遊してくる。 それは巨大なサメだった。


「くっ! なんでわからなかった! 魔力がない! いや少しあるか! これってモンスターですか!」


「わかりません! ですが魔力を隠す生態をもつモンスターはいます!」


(こむぎもそうだったからな......)


 ぼくたちは離れる。 その時船になにかが複数当たった。 それは氷柱のような氷だ。 なん本も飛んでくる。


「なんだ!?」


「魔法攻撃です! とりあえずこの場から離れましょう!」


 ぼくたちはその氷柱の攻撃をかわして船を離れた。


 すると前方の岩場から触手がのびてきた。 リディオラさんは剣できる。


「これは!?」


「タコか!!」


 巨大なタコが岩場の影からぬるりとでてきた。


 幾本ものせまる腕をきりつける。 だが腕は生えてくる。


「だめだ! きってもきっても再生してくる!」


「ええ! あっ! サメが!」


 高速で突っ込んできたサメにぶつかられる。


「がっ!」


 岩場に叩きつけられた。


(それほどの痛みはない!  でも、このままだと。 ぼくは遠距離魔法もないし、手数に分身だけじゃ、他に使えるのは植物と温度......)


「リディオラさん泳げますか!」


「ええ!でも」


「ここからできるだけ海面に離れてください! 早く!」


「わ、わかりました」


 リディオラさんは光の膜からでて泳いでいった。


「よし! その意思を、源たる力へと変じよ! テンパーチャーコントロール!」


 魔鉱石を解除する。 周囲がぼこぼこと泡がたつ。


(体が熱い! いや! まだだ!)


 魔力をあげると、どんどん熱量があがる。 サメやタコの動きが鈍る。


(もっと! 温度を上げろ!)


 更に魔力をあげていく。 ボコボコと空気の泡が激しくなる。


 限界に近くなり魔法を止めた。


 するとサメもタコもゆっくりと消えていく。


(き、きえた...... やばい、意識が......)


 その時上からリディオラさんが近づいてきた。 海面へと抱き上げてくれた。


「ぷはっ!」


「大丈夫ですかトールさん!」


「は、はい、なんとか......」


「まさかテンパーチャーコントロールで海水の温度をあげたんですか」


「ええ...... でもサメもタコも消えて......」


「ですね。 あそこ」 


 海中を指差すと、底に巨大な開いた貝がある。 


「あれは......」


「あれは【ミラージュシェル】だと思います。 実体のある幻を作り出すモンスターです。 どうやらサメやタコのこれが正体のようですね」


「でもあれほどの幻を作り出したなんて......」


「どうやら、外側だけ魔力で覆ってたみたいですね」


「なるほど、全部つくらずに外側だけなら、魔力も少ないのか」


「まあ、これでモンスターもいなくなった。 早く帰りましょう」


 ぼくたちは岸に戻った。

 

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