第19話

「確かにここに触れるとなにか感じる...... これが魔法結界なのか」


 ぼくは昨日襲われた場所に来ていた。


「さて、ここがリンブラントという土地か、いくか」


 ぼくは先にみえる町にはいった。


(さすがにすぐ襲われなかったか...... 待っててもよかったが、それにしても大きな町だな)


 その町はおおきく人通りも多い。 店には多くの品ものが並び、人々も活気があった。 


「王都につぐ都市らしいけど、かなり豊かだな」


 ぼくはその日宿に泊まると、次の日、領主ガルバインがいるという

城へとむかった。


(あまり人にあわないように路地をいくか)


 細い路地を歩いて裏通りにでる。 そこは表通りと違って薄暗く人通りもない。 大きな都市特有の闇を感じる。

 

(誰かきた......)

  

 前から三人ほど、人相の悪い亜人らしきものたちが現れる。


「なぁ、こんなところでなにしてんだ......」 


「いえ、別に......」  


「別にってこたーないだろ。 わざわざこんなところを通るなんて探しものか」


 そういうと後ろからも三人近づいてきていた。


(これは、ローブの人じゃないな......)


「じゃあ、ぼくは......」


 横をすり抜けようとすると、通せんぼせされる。


「まてよ。 金、おいていきな......」  


 そういって腰のナイフを抜いた。 みんな武器をもっている。


(今それどころじゃないのに...... あれは?)


 そのとき、前の亜人二人がふきとんだ。


「なんだ!?」


「全く、薄汚いところには、薄汚いものがわくな」


 そう剣を鞘に納めたままもつ長身の青年がいた。


「てめぇ! この!」


 前と後にいた四人が青年におそいかかる。


 それを剣を抜かないまま一瞬で叩き伏せた。


(す、すごい、あのローブの人より強いんじゃないか)


「おまえはケットシーか」


 そう青年は剣を腰に戻すとぼくに聞いた。


「は、はい」


「本当に実在したんだな」


 青年は不思議そうにこちらをみている。


「ええ、あっ! ありがとうございます。 助けてもらって」


「かまわない。 だが、なぜこんな所に? ここは観光客がくるところではないぞ」


「よく道がわからなくて......」


「ふむ、ならついてくるといい」


 そういって前を歩きだした。


(断ると不自然か......)


 そう思いあとをついていく。



「ほう、パン屋なのか。 専門とは珍しいな。 ほとんどが他の食材も売るからな」


 そう表通りに連れていてもらった。


「確かにパンはあまりうまくはないな。 硬いからスープにひたすかミルクにひたすぐらいしかない。 かといって貧しいものは高い肉や魚は手に入りづらい......」 


 その人はそう考えこむように言う。


(この服装や振る舞い貴族なのか)


「そうなんですか...... なにか新しいパンでもないかと思ったんですが」


「そうか、ただ珍しいものはないよ。 他の町と同じだ」


「豊かなこの町も貧しい者は大勢いるのですね」


 そうさびしい裏通りをみる。


「そうだな。 一部を豊かにすると、どうしても大部分が割りを食う。 とはいえ大部分を豊かにする方法もない。 仕事だって限られている、全員に社会に必要な仕事など行き届かない」


「ですね......」


「トールもこの貧富の差は、貴族たちのせいだと思うか...... 確かに貴族は不正をしているようだ。 だが......」


「えっ? よくはわからないですね。 でも貴族がいなければ他の人たちがその代わりをするから、結局同じようになるような気がしますが」


「そうだ。 貴族をおさめ、管理してこそ不正の根絶ができる。 対立しても従いはしない。 しかしあの方は......」


「?」


「ああ、すまんな。 食材屋ならば表どおりにある。 みてみるといい」


「は、はい、ありがとうございました」


 その人はそのまま手をふって去っていった。


(ふぅ、裏通りは危険だな。 あの人はなぜあんなところを歩いてたんだろう...... いや、いまは)


 ぼくは食材屋を回り、そして夕暮れになると、町を見下ろせる丘まで歩いていった。


(いくつかパンを買ったけど、ライ麦パンはやはり硬いし、大麦パンはなんかボロボロするしにおうな。 そういえばぼくの畑の小麦はどうなってるかな......)


 そのとき、毛がさかだつ。


 後ろに飛び退いた。 横を風が切り裂く。


「なんのつもりだ...... のこのこと現れるなんてバカなやつだ」


 魔法珠でみるとローブの人物が剣をぬいている。


「ほう、魔法珠か...... そんなものをもつとは、やはり王女の間者だったか」


「あなたたちは魔法薬をなにに使おうとしているんだ」


「貴様には関係ない......」


 ぼくは横に飛びさらに反対に飛ぶ。 一瞬でローブの人はさっき、ぼくがいたところをきった。


「ちっ......」


「そこだ!」


 後から姿を消していたぼくが斬りかかった。


「............」


 そのぼくをローブの剣がつらぬく、ぼくは前から突っ込んでいた。


「みえみえだ...... 前と同じ手に何度もひっかかるか」


 ローブの人は隠し持っていたナイフで前のぼくをきった。


「なんだ...... これは!?」


 切ったと思って驚いているローブの人に、ぼくは背後からちかづき、王女からもらった眠り薬をつかう。 


 その体が崩れ落ちるときローブのフードがぬげた。


「ふぅ、えっ!?」


 そこには少女の顔があった。 そして目を閉じた。


(女の子か...... 瞳が青い、この世界でははじめてだな)


 ぼくは彼女を背負って城へともどった。


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