第15話
「本当にありがとうございます。 何て言ったらいいか......」
シスター サリエがそう頭を下げ、パンをほうばる子供たちを悲しそうに微笑んでみている。 ご飯を食べた子供たちはみんな寝てしまった。
「それでお話が......」
「はい、ではあちらで......」
憔悴しているようなサリエさんは、別の部屋へ案内してくれた。
しばし椅子に座ると沈黙があった。
(しかたない...... よし)
「あ、あのサリエさん。 あのバルデスさんとどういう関係なのですか」
「............」
ぼくの質問にサリエさんは驚きもせず黙っている。
「ここにくるとき、ここからでていくあの方の馬車をみたんです。 あんな大商人がこんな小さな教会になんのようかなって」
「ええ...... それは......」
サシエさんはうつむき、口を閉じた。
(だめだ。 こんな聞き方...... もっとはっきりとしないと、更にサリエさんたちを事件に関わらせてしまう)
「あの! えっと、僕みてしまったんです! バルデスさんにサリエさんが薬を渡すところ......」
そう覚悟を決めて話した。 サリエさんは一瞬驚いた顔をしたが、観念したように口を開いた。
「やはり ......そうですか。 それをしられたなら、いくらいいわけをしても仕方ないですね。 トールさん、このようなお願いをするのは、無責任で申し訳ないのですが、私が捕まったらこの子達のことをお願いできますか」
「えっ!? 捕まる......」
「あれはバルデスさんから頼まれた、違法に魔力をあげる魔法薬なのです。 私はシスターになるために魔法の勉強をしていて、魔法薬をつくることができた。 それを知ったバルデスさんは私に話を持ちかけたのです」
「それで......」
「ですが、もっと効果をあげるように言われて...... これ以上効果をあげると飲んだものを死なせてしまう。 私にはできない...... だから国にこの事を話します。 でもこの子達はなんとかしないと」
そう苦しそうにサリエさんは声を絞り出した。
(......それは覚悟していたはず)
「はい、なんとかこの子達はぼくが面倒をみます」
(パンを売ればなんとか、この子たちくらいなら、何とかしてみせる)
「ほ、本当ですか! よかった......」
そう震えるようにいうと、サリエさんは涙をながして両手で顔をおおう。
「王女さまにはぼくから話します。 明日にでも城に向かいましょう」
「わかりました......」
その時急に毛が逆立った。
「トールさん、どうしました......」
ぼくはとっさにサリエさんを抱いてテーブルからはなれた。
その瞬間、椅子がまっぷたつになった。
「えっ!?」
(誰かいる! 魔力を感じなかった...... まずい、子供たちがいるのに!)
「誰かがいます。 子供たちを......」
そういうと、察したのかサリエさんは扉をあけ、部屋を飛び出した。
「こいつ......」
「さっさとやるぞ」
(二人いる...... 一人は聞いたことがある声だ、さっきの護衛のやつらか)
その声の一人はサリエさんにつめよった男の声だった。
その時、足音がした。 そこに爪をだす。 金属音が響き、爪に衝撃があった。
「ちっ!」
(剣か、いや魔法か......)
自分も部屋をとびだし通路にでた。
(こいつら魔力を消せるんだ。 しかたない。 あれを......)
子供たちの部屋の前にきた。
ドンとさっきの部屋の扉が壊され通路にあたった。
「こいつ、音できいている。 壁をたたけ」
そう声がするとドンドン通路の壁を左右にたたいている。
(くそっ! 音が大きくて、足音を消された)
わからないで左右をみていたら、ぼくの体は切られ倒れた。
「ケットシーらしいが、しょせん素人だ」
「みたいだな......」
そういうと男たちは子供たちの部屋を乱暴にあける。
「いや! やめてください!」
そう子供たちをかばってサリエさんがいった。
男たちは姿をあらわす。 子供たちは泣いている。
「お前が悪いのさ。 さっさと薬を渡せばよかったものを」
男たちはサリエさんにちかづく。
「ぐわっ!」
「ぐ、なにっ!?」
そのとき、後ろからふたりの足をぼくは爪できった。 男たちは揉んどりうって倒れた。
「な、貴様!! さっききったはず! なぜ!! ぐむっ!」
二人の口をパンをもってきた時につかった布で縛った。
「サリエさんシーツを貸してください」
「は、はい」
シーツをつかって、男たちふたりの手を縛る。
「やはり、これか......」
男たちの懐にあった魔鉱石を取り上げた。
「すみませんサリエさん。 他のやつがくるかもしれない。 いまからぼくの店までいきましょう」
「は、はい」
ぼくたちは教会をでて、町で荷車を借りて子供たちをのせ、店までかえった。
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