第12話

「うむ、なんとかできた」


 窓かはみえる外に机をだし、昨日仕込んで朝早くから焼いたパンを30個ほどならべ値札をつけた。 一個5ゴールドだ。 


「リディオラさんは値段は妥当と言ってた。 果実や惣菜パンはないから...... 作ったけどあまりあわなかった。 でもライ麦パン一種は少ない。 やはりバリエーションがほしいな」


 リディオラさんは朝早く荷車に50個ほどのパンをのせ町へと販売にいってくれた。


「ピィ?」


 扉のところにはこむぎがきた。 


「ダメだよ、外にでたら。 一応教わったアクアミストの魔法で浄化してるとはいえ、鳥、いやモンスターを食べ物のところにはおけないな。 目に見える場所にぼくがいるとお利口にまってるけど、やはり衛生的に問題になるかも」


 そう考えながら、家にはいる。


「奥で待っててね」


「ピィ!」


 こむぎはゆっくりとその大きな体で、いつも寝ている場所にいき座り、すぐにうとうとしている。


「とはいえ、すぐ売れる訳じゃないしな。 そもそも宣伝すらしてない。 リディオラさんの方に期待するか」


 淡い期待をもちながら、どうするか考えながら待つ。


(やっぱり種類かな。 果実をいれたり、はちみつはあるし、塩パンとか...... でも)


「やはり小麦を......」


「ピィィィ!」


 こむぎが呼ばれたと勘違いして抱きつきにきた。 羽毛はふかふかで暖かく心地いい。


「ち、ちがう、こむぎ。 ふわふわでとても柔らかい...... 眠たくなる......」


 

「はっ!」


 昼になっていた。 窓からみてもパンは一つもまだ売れていない。 


「まあ、そうだよな...... そもそも、ここで売っても誰もこないか。 ぼくも売りにでたいけどこむぎがいるからな。 さてどうするか。 そうだ。 魔法でなんとかできないかな...... 魔法」


 そのとき思い付いた。


「そうか! なんで気づかなかった!」 


「ピィ?」


 ぼくはおいていた鞄から丸い鉱石だした。


「この魔法なら!」


 早速集中して玉に魔力をこめる。 すると、刻まれた紋様が輝き、もつ一人のぼくがあらわれる。


「ピィィィ!!」


 こむぎは左右のぼくをみてびっくりしている。 


「これなら一体は仕事に向かえる! 確か魔力の届く範囲だったっけ? 早速どこまで届くか試そう」


 ぼくは自分の分身を家において、家からでていく。


「よし、まだ分身は存在するな」 


 ぼくはゆっくりと歩きながら町にはいった。


(魔力を感知できている。 こむぎもついてきていない)


 そこで荷車を運ぼうとしているリディオラさんをみつけた。


「あっ! リディオラさん!」


「トールどの!?」


 

「......なるほどイミテーションボディーの魔鉱石ですか...... アシュテアさまのものですね」


 ぼくはリディオラさんに事情を説明した。


「すみませんもらってしまって」


「いいんです。 それを使ってよく城を抜けだしますからね。 それにしてもあの店からここまで魔力が届くなんて...... ああ、パンの売れ行きは上々です。 完売しました」


 そう空の荷車をみせてくれた。


「本当だ!」


「やはりトールさんの用意した試食がききましたね。 普通のライ麦パンよりおいしかったので買い手がつきました。 明日も売ってほしいとの話がきてます」


 そうお客さんのメモを渡してくれた。

 

「ありがとうございますリディオラさん! あとこれ少ないですが」


 ぼくは売上げの半分を渡そうとした。


「いえ、いただけません!」


「労働には対価が必要です。 おかげでこむぎのお世話をしながらパンを売ることができました。 顧客まで開拓してもらったんですから」


 渋るリディオラさんに売上げを渡した。 


「よし! これで明日からパンを売ろう!」


 そう意気揚々とかえる。


 

 それからぼくは毎日パンを作ると、一日50個ほど売れ、お金を稼げるようになった。 


「250ゴールドの売上か。 経費としてだいたい50程度かかるから、200ゴールドだ」


 一月ほど続けて、7000ゴールド手に入れた。


「よし、少し余裕ができた。 少し買い物しよう。 小麦の苗は......」


 町で店を物色する。 


「あった小麦だ!」


 ある雑貨屋に小麦の種があった。 大きくて固そうだったが小麦だった。


(でも、これって僕の知ってる小麦と違うような......)


「えっ!? 一粒50ゴールド!?」


「まあ、高級だからね。 たまに低品質のものが売りにだされる。 つい珍しくて買っちまったけど売れやしない。 作るのはそう難しくないらしいが...... モンスターが多くて畑が小さいからね」


 店の店主が困ったようにいった。


(50か...... 今なら10000ゴールドほどあるけど)


「あの...... ここにあるの全部買うとしたらいくらですか?」


「えっ? 買うのかい! なら500粒ほどあるが、そうだな全部なら10000ゴールドでいいぞ」


「ほんとですか!? じゃあ買います!」


 ぼくはその値段で買いとる。


(これで畑を作り増やせれば......)


 そう考え店へと帰った。


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