第7話

 アシュテア王女から魔法を教わりながら、遺跡をすすむ。


「......光よ、その身を輝かせ、照らせ、ライトスフィア」


 小さな光が両手の間にあつまる。 


「で、できた! 魔法が使えた!」


「ええ、それでいいわ」


「ふぅ、かなり集中力を必要としますね。 続けると魔力探知が途切れそうになる」


「そもそも、普通の人に魔法を使いながら探知は無理なの。 君の魔力の多さだからできる芸当よ」


「そうなんですか...... ああ、そういえば、王女は姿を隠してここにきたんですよね。 魔力探知ならすぐにばれるはずなのに?」


「私はもうひとつの魔法もつかってたのよ。 この魔鉱石でね」


 そういうと懐からひとつの鉱石をだした。


「これに魔力を加えると......」


 もう一人の王女が現れた。 


「王女が増えた!!」


「そう【イミテーションバディ】の魔法よ」


「そうか、これを城に置いてきたんですか」


「ええ、机にでも本をもって座らせておけば、誰も感知なんてしないでしょ」


「なるほど、そっくりですね」


 ぼくはそのそっくりな王女をみる。 瓜二つだ。


「ええ、ただ魔力の届く範囲にいないと操作はできないわ。 届かなくなると消えるから」


「......ということは?」 


「そう、もうばれてる。 今頃リディオラは怒って追いかけてきてるはず」


「ま、まずいじゃないですか! は、早くいきましょう!」 


「ええ、でもこれあげるわ。 持っておきなさい」


 ぼくにアシュテア王女は魔鉱石を持たせた。


「えっ?」


「君に必要だと思うから」


「で、でもお金もなにも......」


「あるじゃない...... そーれ」  


「ちょっ! やめ、やめて、やめてーー」


 アシュテア王女はぼくをもふり続けた。



「はぁ、はぁ......」


「ふぅ、まだもふり足りないけど、リディオラに追い付かれる。

いきましょう!」 


 そう元気よくアシュテア王女がたちあがる。


(め、めちゃくちゃもふられた...... ゴロゴロのどがなってた恥ずかしい) 


 とりあえず、気を取り直して王女のあとをついてあるく。


(ん? なにか遠くから近づいてくる。 これはモンスターだ!)


「アシュテア王女! 奥からモンスターがきます!」


「ん? いないじゃない......」


 しばらくして遠くから大きなコウモリが飛んできた。


「な、な、ナイフで! いや走って爪で!」


 ぼくがもたついていると、王女がまえにでる。


「ま、まって! あぶない!」


「凍てつく氷のつぶてよ、降り注げ、フリージングショット」


 そうアシュテア王女が唱えると、魔方陣があらわれそこから氷のつぶてが放たれると、あたったコウモリは凍りつき、地面に落ちて割れた。


「ふー こんなものね」


「す、すごい。 あれもけっこう大きい魔力をもっていたのに」


「なるほど、やはりかなりの感知範囲ね。 私の数倍以上かしら、これなら奇襲をうけずにすむ。 楽勝ね」


 そうアシュテア王女は楽しげに足取り軽くあるいていく。


(王女はかなりの魔法の使い手だ...... なるほど、自信があるわけだ)


 ぼくたちは遺跡を進み、途中で文献や書物や魔法のスクロールを手に入れた。


「うーん、魔法のスクロールはあるけど、ケットシーの記述はないわね。 まあけっこう古いものだから帰ってからよく調べるわ。 どうしたの?」


「......なにかが奥にいます。 これはブルージャイアントより魔力が大きい......」


 ぼくは奥にいるそのなにかの魔力を感じ取っていた。


「ブルージャイアントより...... 厄介ね。 引いた方がいいわ」


 王女は即座に判断して、すぐに引き返そうとする。


「......近づいてくる! 速い! すぐに追い付かれます!」


「待ち構えましょう!」


 そういってふりかえる。


「えっ!?」


「逃げられないのに、後から攻撃を受け、怪我でもしたらどうしようもなくなる。 ここは戦うことにかけましょう」


「わかりました。 でも後ろに下がってください。 そして目をつぶっていてください」


 全身に魔力をあつめ爪をだし、モンスターが視界に入る前に灯りの魔法を消した。 ぼくは片目をつぶる。


 ぐんぐんと大きな魔力は近づいてくる。 


(もう少しだ...... ここ!)

  

「......光よ、その身を輝かせ、照らせ、ライトスフィア」


 一瞬光が照らされると、まばゆい光でなにかがのけぞる。 


「炎よ、渦巻いて、燃え盛れ、ダンシングブレイズ!!」


 王女の詠唱で炎の渦が、暗闇にいたなにかを燃やした。 しかしその炎はすぐに消える。 


「あれは!?」


 灯りが照らすそれは、人より巨大な蠍のようだった。


「マジックスコーピオン! 魔法耐性があるから、魔法のききがわるいわ! その身体に安息の守りを! プロテクション! 物理学賞耐性をあげたわ!」


 アシュテア王女がそういった。 ぼくの体が赤くひかる。


「わかりました!」


(サソリは急に明かりに照らされて動きがわるい! 防御が上がってるなら爪に魔力を集中!)


 ぼくは地面を走りサソリを爪で切り裂く。


「やった! えっ!?」


 切った体からまたサソリが再生し、二匹になった。 そして長い尾から、紫の毒液のようなものを噴出してくる。 


「忌まわしきものから、その身を、守る盾よ! ライフシールド!」


 王女の魔法で目の前に透明な盾があらわれ、その液体は届かなかった。 液体は地面に落ちると煙を放ち石を溶かしている。


「助かった! あんなの食らったら死んでしまう! でも二匹もどうやって......」


「モンスターは無敵って訳じゃない! 切った分小さくなってるわ! どんどんきりなさい! 魔力がなくなればそれ以上は小さくなれない!」


 よくみると確かに少し小さくなったように見える。


「よし! ただ二匹は一人では! あっ、そうだ!」


 ぼくは走り飛び上がると、二人になった。


(【イミテーションバディ】、ぼくの魔力なら二体で戦える!)


 二人のぼくはサソリを切り裂いていく。


 王女はシールドやプロテクションをかけ続けてくれる。


 切り裂き続けたつサソリは小さくなっていき、ついに動かなくなった。


 

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