第6話
とりあえず家を手に入れたぼくは、アシュテア王女から呼び出され、再び町へとやってきていた。
(アシュテア王女がぼくを呼び出された。 まだ仕事が決まってないのに...... このままでは枕にされてしまう...... さわられるのは嫌じゃないけど、勝手にゴロゴロ喉がなったり、ふみふみしてすごい恥ずかしいからな)
「あ、あのリディオラさん。 なんとか断ることはできませんよね」
「申し訳ありません。 王女の命ですので、しばしのご辛抱を...... ですが、非道をさせたりはしないので御安心ください」
そう複雑な表情を見せた。
(まあ、リディオラさんがいれば大丈夫か)
そう覚悟して城へとむかった。
「よくきたわね! ほらみて!」
そうにっこにこでアシュテア王女は、黒ネコの刺繍のはいった布をみせてきた。
(完全に枕の布だ!! 襲われる!)
「お止めください王女! トールどのがおびえているでしょう!」
「わかってるわ。 ちょっとした冗談よ」
そういって王女はこたえる。
(うそだ! その布、わざわざ作らせたの知ってるから!)
「そ、それで、ぼくになんのご用なんですか?」
おずおずときいてみた。
「少し頼みたいことがあるの...... もちろんお礼はするわ」
そういってベッドに座る。
(即、枕ではなさそうかな)
「君、リディオラからきいたけど子猫を探しだしたそうね」
「ええ、魔力で感知しました」
「やっぱり魔力感知がかなり高いようだわ」
「そうなんですか?」
「普通は生物とか無生物の違いまではわからないのよ」
「そうなんだ...... 色とか、大きさ明るさとかで違いがあるんですが」
「......なるほど、それはケットシーの能力なのかもね。 そこで探し物をお願いしたいの」
「探し物ですか?」
「この町から北にある遺跡【エバール遺跡】に、かつての王家にあった古代の魔法のスクロールがあるといわれていて、それを探してほしいの、少し迷路のようになっていてね」
「アシュテアさま。 さすがに数百年もまえのものなど、見つけられませんよ。 しかもあの遺跡にはモンスターもいますし、危険過ぎます」
「そうね。 だから付き添いを用意したわ。 遺跡まえにいってまってて」
そういわれて、仕方なく北の遺跡へと向かった。
「ああ王女はいったけど、リディオラさんはこられないし、本当に大丈夫かな。 あった、これが遺跡か......」
山道の先に遺跡らしき石の建造物があった。
「ここか...... でも付き添いって誰だろう」
「私よ」
そう声が聞こえ、周囲をみわたすが誰もいない。
(誰もいない...... 魔力を)
魔力を調べると、そばに誰かいた。
「なっ!?」
飛んで距離をとる。
「気を緩めすぎよ。 姿を消す魔法だってあるんだから、常に気を引き締めてなさい」
姿を現したのはアシュテア王女だった。
「王女さま!? なんで、そうか、魔法で姿を消したのか!」
「そういうこと、抜け出してきたの」
そう事も無げにいった。
「だめですよ! 城をぬけだしたら!」
「いいのよ。 たまには息抜きしないと退屈で死んじゃうわ、それに......」
嫌な笑みを浮かべて、両手をわきわきとうごかした。
「やっと二人きりになれたわね」
「ま、ま、待ってください......」
「だーめ!」
王女は抱きついてくると、耳をモミモミしてくる。
「や、や、やめて、いやっ」
耳を揉まれると気持ちよくなってくる。
(気持ちいい、安心する......)
無意識に僕は腕をだしふみふみしてる。 そしてめちゃくちゃもふられる。
「はひぃ」
「ふぅ、やり足りないけど今回はこのぐらいね。 早く中に入らないとリディオラにばれる頃だわ」
そういうと、耳から手を離した。
「な、なん、なんなんですか......」
「さあ行くわよ!」
そういうとアシュテア王女は、ぼくの腕をとり強引に遺跡の中につれだした。
遺跡のなかは明かりもないのにそれほど暗くもない。
「暗くない......」
「古代の魔法がかけられてるからね」
「古代の魔法...... ここに、何があるんですか?」
「はるか昔の文献もあるはず」
「それだけですか?」
「......いいえ、古代の魔法もあると王家の日記にあったわ。 もしかしたら【願望の魔玉】があるかも」
「願望の魔玉......」
「ええ、願いが叶う魔玉よ。 昔文献でみたことがあるの」
(魔法がある世界ならあるのかも......)
「それに君にも魔法を教えようと思って」
「魔法......」
「魔法はどう発動するか、リディオラから聞いてる?」
「えっと、魔法のスクロールで覚えたものを、魔力で紋様を描いたり、呪文を詠唱して発動する...... だったと思います?」
「思います...... って使おうとは思わなかったの?」
そう意外そうにアシュテア王女は聞いてきた。
「えっ? あ、そうですね。 あんな魔法をどう使っていいかわからなかったんです」
「あんな魔法...... ああリディオラの魔法ね。 あのこは攻撃が多いのよ。 私を守るためにね。 でも魔法は攻撃だけじゃないのよ。 私の姿を消す魔法みたいに、使えるようになったほうが将来のためになるわよ」
「そうなんですか...... そういえば台所に魔鉱石があったっけ?」
「そう、魔鉱石なんかに呪文を刻めば、様々なことができるようになるわ」
そういつの間にかぼくの頭を撫でながら、アシュテア王女はいった。
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