第12話 第二の塔

 第二の塔も中は異様に広かった。マルセルはもう驚かない事だった。

 第二の塔の最上階の部屋を、ノックして開ける。全面本棚ではなく。動物の金属パーツが転がり、窓もあった。

「やーっときたかい」

 ボーイッシュな声だった、灰色のショートカットの人形が机に両手で頬杖をついていた。

 顔もなかなか可愛らしく少年のようだ。

 机の上にも床にも所狭しと、歯車やゼンマイのような金属パーツが転がっていた。

「塔の様子を見てくるよう言われて」

「知ってる、見てたもん」

 塔には窓があるが、事情を知っているのは変な話だ。

「いつから」

「君が青の君の塔に行くところから」

 むしろ気づいていなかったのか、という言い方だ。

「どうやって」

 塔から出られないのではないかという意味だ。

「鳥の目を通して」

「じゃあ、さっきのユニコーンも」

「そうそう、ボクが作ったの」

 会話中ずっと灰色の人形は食い気味だ、退屈した子供のようだ。

「あと」

「まだ聞くのー」

「じゃあ最後に一つ、お名前を」

「灰の君」

 意味がよくわからないが、塔の人形は『髪の色の君』という名前なのかもしれない。

「では、見るだけ出来たので霧迷宮が出る前に帰ります、失礼しました」

 こんな森奥で霧迷宮になってしまったら、大変だ。

「見るだけでいいの? まぁいいか、帰りもユニコーンで送ったげる」

 灰の君はマルセルの青い目に向かって、話しかけた。

 また目が覚めて、朝だったやっぱり、塔の中では気づかず眠っていたらしい。

 ユニコーンで送ってもらい、街に帰れた。

 第三の塔はもっと遠い、そう簡単に行けるものではない。マルセルは地図を開くと、次の最寄駅を探した。

 次の塔は、さらに汽車に乗り、また森の奥にあるらしい。

 青に君と違って、灰の君は何も頼んで来なかった。そもそも君はどんな意味だろうか。

 そもそも塔は全て存在したのだろうか。

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