第11話 ユニコーン
ルービックキューブと同じ動きをするホテルを起点に、マルセルは次の塔を目指すことにした。
またしても塔は森の中。かなりの距離がある、ちゃんと辿りつけるだろうか、迷って森で霧迷宮を迎えたら、記憶を失って......と思うと恐ろしいが、マルセルは考えるより行動する派だった。
森を進む、ふと見た木の間に白馬がいた、額から右回りの鋼鉄が生えているからユニコーンかもしれない。
ユニコーンは皮膚の代わりに陶器でできていて、骨格剥き出しな馬や爬虫類とは大違いだ。
くっきりとした瞳はブルーサファイヤの様だった。怯えるもしくは様子を伺う様に、ゆっくりマルセルに近づいてきた。
一番最初の塔で青い人形と交換させられた目に惹かれているのではないか、とぼんやり思った。
ユニコーンは結局マルセルの横に来ると、跪き、乗るのを促すように、つぶらな瞳で訴えてきた。
マルセルは試してみようくらいの感覚で、跨ってみた。
ユニコーンは立ちあがった、前後を同時に上げるわけじゃないから、振り落とされそうになった。
アタッシュケースを左手で掴み、右手をユニコーンの首に軽くかける。
ユニコーンは気楽にパッカパッカと森を進む、意外と揺れる。それから少しずつ加速していき、振動が少しずつ減ったと思った頃には、空を飛んでいた。
右手前方、森の禿げた場所に塔の頭が見える。
ゆっくり旋回しながら、ユニコーンは塔に向かっていく。
気がつけば塔は目前だ、空中にいると距離感やスピードがよくわからないからだ。
近くで見てみたが、塔は初めの塔と同じデザインだ。
ユニコーンをおり、ありがとうと手を振ると、感情のない陶器の顔が照れて見えた。
青い人形の見てきてくれ、という言葉から考察するに、もしかしたら自分のこの青い目を通じて、視界を共有しているのではないかと思ったが確証はない。
果たしてこの塔はどんな塔だろうか、マルセルは期待を胸にドアに手をかけた。
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