第10話 変わったホテル

 ホテルの外観は少し縦に長かった。外観は普通、体積も普通なのに、ホテルの中には機械仕掛けの爬虫類が放し飼いされていた。

 酸化したダマスカスみたいな皮膚部分的に持つカメレオンは、鉄の骨格を丸出しにして、柱にペッタリくっついたりした。

 既にマルセルはこれぐらいではもうあまり驚かず、借りた部屋へと向かった。エレベーターの蛇腹に開いた扉も普通、階数も普通だった。普通だと普通で何だか物寂しい気がしたから、我儘なものだ。

 ロココ調で統一された部屋はほのかに薔薇の匂いがした。

 夜まで時間があるから、マルセルは街に繰り出すことにした。

 巨大な日時計以外に面白いものはなく、夜を少しビビってホテルに帰った。

 部屋番号を確認して驚いた、初めは3-3だったのが1-1になっているのだ。フロアマップを見てみると、3*3*3に部屋は配置されておりルービックキューブと同じ形だった。フリント(手前)が90度回転しマルセルの部屋はちょうど変わったらしい。

 朝起きて、めんどくさく思ったのは寝た時と外の景色が違う事だった。それはマルセルの部屋は、寝た時の場所から移動したという事だ。

 フロアマップを見ると一番離れていた。形を見るに、おそらくフロントを180度回してから端同士と中同士をT字に入れ変える、Tパームが行われたと思われる。

 果たしてこのホテルが揃う事はあるのだろうかと思った。

 





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