第9話 鉄道

 この城がフィンザール城という名前だっと知ったマルセルは、地図を開き最寄りの塔を探した。

 一番最初の塔以外はかなりの距離があるし、塔は田舎ばかりだ。

 一晩で行ける距離ではないだろう。汽車をを使えばあるいは、と思ったが都にしか線路はなく、田舎行きはない。

 マルセルは適当な汽車に乗って次の塔への最寄りで降りようと思った。

 駅のプラットフォームは天井が高く、鋼鉄の骨格にガラスの皮膚が支えられていた。

 汽車はただで乗れる様だった、そもそもこの世界で通貨を見た記憶がない。

 汽車はロボットアームが石炭をつかみ機関部に突っ込んでいた。無人走行という事だ。

 止まった汽車のドアは勝手に同時に開いた。かなり壮観だ。

 ゾロゾロと巨大なクリノリンをつけた人形や杖をついた人形が汽車に吸い込まれていった。

 一歩ごとに遠近法を無視して人形が小さくなっていくから、マルセルは自分の目か頭がおかしくなったかと思ったが、汽車の中は異様に広く、塔や図書館を思い出した。

 通路だけで汽車と同じ幅があった。そして個室へ続く扉を開けるとさらに部屋がグイーンと大きくなるのだった。

 図書館は広かったが、小さくなったりはしなかった、汽車は中が広がり、外から見ると小さくなっていく様に見える。

 前者は自然に空間が広がり、後者は空間を歪めて広くしているらしかった。

 外の景色は歪まず見れるのだから不思議としか言いようがない。

 汽車はゆっくりと加速し出し景色はワープする様に二転三転して次の駅に着く。しかしレールの繋ぎ目を超える振動は変わらない。マルセルはこの乗り物を理解しようとするのを放棄した。

 数時間ほどしたら、目的の駅についた。

 マルセルは夜までに安全な建物を見つけなくてはと躍起になった。

 クリーム色の石造が目立つ街だった。

 地味なホテルを取った、変なものなんか見てらんないという考えだった。 

 

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