第6話 図書館

 マルセルは日が沈まないのはもしかしたら夜がないのでは、と思ったが街を歩いていたら少し、日が傾いることにきがついた。

 塔で丸一日眠っていたのかもしれない、そう思い始めていた。

 マルセルはボーと歩いていると、図書館の文字が見えた。ローマ風の建物でそこに行けば塔の位置くらい簡単にわかるのではないだろうかと考えた。

 建物の背の高い扉を押し開くと、図書館は地平線まで縦にも横にも伸びていた。せわしなく働く機械たちと、物色する人形。

 感覚がおかしくなるスケール感に怖気づいて、横に目をやると検索エンジンと真鍮で書かれた、色々つけたタイプライターの様なものがあった。

 マルセルは検索エンジンに近づき、小さく書かれた順番通りに操作する。

 まずはレバーを下げる、プシュッと音がした、次に適当に塔の位置と打つ、字を打つたびにプシュッとなる。最後に検索のボタンを押す、これが少し重たい。

 歯車が回転し、何度も接触するような音が響き、その状態が何分も続いた、大丈夫だろうかと思い始めたころに検索エンジンは異様に長い紙を、吐き出した。

 マルセルは紙を手に取ると、そこに細かな字で本のタイトルと、本のある位置が羅列してあることに気が付いた。

 数十分の時間をかけ、全ての本の位置を読んだマルセルは、良さそうだぞと思った本の下に向かった、この道のりが長くて、入り口を見失ったらどうしようかと思ったほどだった。

 マルセルはかび臭い本を手に取った。バサと地図が落ちた。塔の位置を全て記録しているようだった。

 聞くと本はコピーを作れるらしい、地図だけコピーを取らせ、図書館を出た。

 塔と一概にっても、色々あるだろうから手に握りしめた地図が正しい保証はないが、海に落とした砂粒を見つけるよりも簡単で具体的な目標になりマルセルはかなり満足していた。

 そして外はちゃんと夕暮れでマルセルは安堵した。

 

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