第5話 夢の跡

 マルセル気がつくと塔の入り口で眠り込んでいた。塔の扉は不思議と重たく見え、押してみようという気さえ起らなかった。

 夢の様なことを思い出そうと努力すると、青い人形にあった事を思い出した。そうだ、瞳はどうなった? マルセルは近くに見つけた小さな水たまりを覗いた。水たまりに映るマルセルの片目はキチンと蒼い。

 こうなってしまうとマルセルは逆に気が軽くなるのを覚えた、背中に青い人形がいるような気がしたのだ。

 あてもなくマルセルは人形の頼み通り、塔を探す事にした、といっても地図も何もない、塔が残り11本なことしかわからない。しかし、広場にはもう一本道といえば道、木が生えていないだけといえばその通りな道が存在することに気が付いた。

「よし」

 見通しの悪い道に踏み込むのは少し、度胸が必要だった。

 道をずっと進むと、自分がいま塔からどれほど離れたかすぐにわからなくなった。しかし漠然と、街のほうへ向かっているきがした。急に視界が開け街に出た。

 街はすでにマルセルの知らない街だった。恐らくなかなかの距離が離れているに違いない。不思議なことに日の位置は変わっていなかった。

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