四話 2日目

結局救急車には乗れなかった。普通に椅子をすり抜けて置いてけぼりにされた。

その後救急救命士の人が言っていた長手市民病院に向かった。


ていうか、浮けるって便利だねぇ。体力消費量が少ない気がする。


で、今私はベッドのそばにいた。ICUだ。

そのベッドには寝ていた。

多分目覚めることはないだろう。病院の先生たちが言っていた。


けど、私は生きている。見えるけど見てもらえない。


「…琴花さ……02号……いきま…」

「…脳…が……常な…です…」


琴花っていうのは私の名前。後藤 琴花、16歳。ちょっと外に出て話を聞こうかな、大切なことならちゃんと聞いておかないと。


ガラガラガラガラッ


「もしもーし、琴花さん!栄養の点滴、繋ぎ変えますね。」


「はーい」

無視。当たり前だよね。聞こえないもん。


「で、旦那さん、さっきの続きですけど、琴花さんは他の人に比べて脳波が異常に多いんです。」

え、もしかして幽霊として存在している間も脳みそは実体のを使ってるってこと?


「は、はぁ……それなら何なんです?」

おとーさん!よくぞ聞いてくださりました!


「もう少しで回復するという事です!!」


…………


うーん…違うと思う。何かが。幽霊として存在できるってことは少なくとも現実に戻るにはワンステップ必要なわけでしょ?


「それは確かなんですか?」


「いや、確かじゃありません」


は?いやいやいやいやいや…確かじゃないことを絶対そうだみたいに言わないでくれる?仮にも看護師さんでしょ!?


「言いにくいことなんですが、統計学的には脳波が一度弱まってから回復することが多いそうです。」


何を言ってるのやら…もはやさっきの話嘘じゃん………元気づけようとしてくれてるのはわかるけど…

っていうか、『脳波が一度弱まってから』ってことは私みたいな人も何人かいたんだ。それなら待てばなんとかなる!かな?


まぁ、実体は死ななさそうだし、とりあえずおばあちゃん家に帰るか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る