第7話 JCだらけのハーレム教室

 市立松山女子中学に赴任したおれ、GTOこと大仏太郎は、無類の女好きで、そうして、どこかオンナごころをくすぐる誘引物質というかフェロモンというか、を天性の体質で?撒き散らしているらしく、すこぶる女性たちの評判がいい。…天性のプレイボーイ、カザノヴァ、ドンファン、世之介、そういうタイプなのだ。


 そういうおれが、性的好奇心ではちきれそうになっている思春期の少女たちの真っただ中に現れるとどういうことになるか?


 こういうシチュエーションほど面白いものはめったにない。だよな?


 ピュアでかわいい少女たち、ナボコフの言う”ニンフェット”の年頃のティーンズたちが集団になって一堂に会するという状況もレアといえばレアで、まあ、中学校というのはその意味では特殊な場所だ。


 千載一遇で至高貴重のその類希な”聖地”の巡礼者?…女性崇拝の傾向のあるおれは、教室に入る前は、そういう敬虔な気持ちにすらなるのである。


 「えーだから、現在完了形には結果の意味と経験の意味があり、have と過去分詞の組み合わせで出来ていて、例えば Spring has come は「春が来た」で、結果ですね。「I've been to Europe 」は「ヨーロッパに行ったことがある」…経験ですね?

 「I've been to Soap Land 」は、「石鹸の国に行ったことがある」ですが、これはおとぎの国のことではなくて…おっと口が滑った。てへべろ」


 JCたちがどっと笑う。ソープランドが、何の意味かくらいはだいたいの子は知っている。それにこういう”くすぐり”をまじえたほうが却ってよく記憶に残りやすいということを、おれは経験上知っているのだ。


 「では、今日はこれまで。来週は小テストだからしっかり復習して備えてください。」


 緊張がほどけて、わいわいがやがやが始まる。学校の方針が、「自由なコミュニケーションと交流で学力だけでなく生きるための総合的な力を養う」なので、授業の後に教師と生徒の比較的カジュアルな懇談の時間が設けられている。


 「先生は、ソープランドに行ったことあるの?」

 栗木という、リスみたいなくりくりした瞳の子が好奇心たっぷりに尋ねてきた。

 「え?まあ、独身だからな。のぞいたことはあるよ。」

 「きれいな人いた?」

 「うーん。まあ、化粧で素顔はわからんが、いろんな人いたよ」

 「だいぶ行ってんじゃん」

 ケラケラケラ、と栗木が笑う。箸がコケタ?とでもいうように周囲の4,5人のJCもつられて爆笑した。


 本当は細かく話し出すと一晩かかるくらいにソープ嬢とかとの付き合いのエピソードには事欠かないのだが、ここではさすがにはばかられて、「興味があるのは分かるけどまあまだお前らは中学生だからな。いずれゆっくり話してやるよ」と、お茶を濁した。


 「センセイの初体験はいつですか?」と、柔道部の黒帯の、阿部というごついのが訊いてきた。「私たちも思春期ですから、参考にしたいからー」と、いう口調は興味津々で、真剣そのものである。確かに、第二次性徴期は、性についてはあれこれ思い悩む年ごろなのだろう。


 「オレかー?」と、言いかけて口ごもった。

 見るからに、オレ好みの知的で清楚で、前々から目をかけている学級委員の知野という美少女が、これも爛爛と目を輝かせておれのほうを見ているのに気付いたからだ。


<続く>






 

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