第4話 下宿は温泉宿の…蒲団部屋?

 


道後温泉というのは、聞いたことはあったが、まったく未知の土地でもあり、色々調べると、3000年前からある、日本三大古湯、なのだそうだ。


 3000年というのはすごい。紀元前1000年ではないか。邪馬台国というのができるより前かな?分からないが?


 だいたい四国に来たのさえ初めてで、土地も不案内だし、友人知己はもちろん皆無。口をまともに利いてくれたのは、さっきの”海凪”さんが初めてだ。とりあえず、始業式で早くに退けた中学から旅館の一室に戻った。


仲居さんが、お茶を運んできて、「フリースクールに着任なさったそうで?」と、挨拶してくれた。

 「ええ。英語のティーチャーです。ちなみにこれは tea ーCHA(茶)ー。」おれは湯呑を指して言ってみた。落語で言う「つかみ」のつもりである。

 「え?まあ、オホホホ。いやだ。真面目な顔してずいぶん面白い先生だこと」

 おれの肩をどんっと”どつき”、仲居さんは温泉の人らしくつやつやの顔をほころばせて、打ち解けた様子になった。


 …「そうですからね、不登校とかいろいろ問題があって転校してきた生徒も多いしね、どうせ中学生の受け持ちは気苦労も多いし、父兄のペアハラとかカスハラも多いし、いじめも横行していて、続く人が少ないのよ。生徒のいじめもあるし、教員室のも壮絶なくらいひどいらしくて…やっぱ今の学校ってどこもそうなのかしらね。最もノイローゼになる人が多い職業は教師だって言うし。…」


 仲居さんはおれの青雲の志をくじくような話ばかり仕掛けてくる。


 「でもね。この辺は温泉の功徳でか、玉の肌の別嬪が多いわよ!そこはメリットね!マドンナっていう昔の小説のヒロイン記念した美人コンテストもあるのよ。独身だったらお嫁さんを探したらいいわね!ロマンチックだしね?」


「露天風呂かなんかで偶然居合わせて、何となくお近づきに、なんてあこがれるシチュエーションだなあ。湯上りの美女なんてこれほど素晴らしいものはないもんなあ」


 「このスケベ!」仲居さんはまたどんっとおれをどついて呵々大笑した。


 とにかく情報収集とかできて、いろんな様子も分かってよかった。

 その日は、旅の疲れもあり、布団をかぶったおれはすぐ白河の夜船で櫂を漕ぎ出したのだった。


 <to be continued>

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