第21話

時折来る他の貴族の令息、令嬢と談笑や挨拶などを交わす。

正直とても面倒だし、肩が凝る。お腹も段々空いてきた。


ひっきりなしに来るというわけでもないけれど、料理を取る暇はないからお腹が空くし、令息、令嬢どちらも腹黒さが見え透いて実に面倒だ。

王家の権力を後ろ盾にしたいという欲望が分かっているからあまり関わりたくない。

しかし、パーティに呼ばれるということはそれなりの立場であるのだから蔑ろにすることや、ぞんざいに扱うこともできない。


別に適当に扱ったっていい。どうせ私は王になるつもりもないし、悪評が私に集まるのなら良いのだけど……家族やキラズ様にまで悪影響が及んでしまうかもしれないと考えると、やはり、この対応が一番無難と言える。


偶に、側室にしてください、と暗に言ってくる令嬢も居た。色仕掛けと言うのか、ぶっちゃけ色気なんて同性なんだから感じないし、直ぐにビクッと何かに怯えて帰って行った。後ろにキラズ様がにこやかに立っていたけど……私は気にしない。


人の波が漸く引いてきたので少しばかり食事を取る。美味しそうなのは………やっぱり肉系統は匂いだけで美味しそうだと思う。それと、少し驚いたのが魚系があること。しかも海魚っぽい? ここまで持ってくるのは大変だから、このパーティは結構気合が入っていると分かる。まぁ王族の誕生日だからか。

美味しそうだし、一切れだけ取っておこう。

後は……野菜もやっぱり必要。サラダの様な物も取っておく。


こんなもんか。会場の端側、壁の方へ向かい、料理を頂くとしよう。自然の恵みに感謝して、いただきます。………うん。美味しい。


「キュリズ様。こんな所ではなく、私と一緒にお食事しませんか?」

「わっ……! バラン公爵令嬢、驚かさないでください……」

「ふふっ。驚いた顔も可愛いですわ」


クスクスと笑い、反省した素振りを見せない彼女。私も特に本気で怒ってるわけじゃないから良いけど。

それと、一緒に食事かぁ……悪くはない……かな?


「一緒に食事でしたよね。良いですよ。どこで食べるのですか?」

「…! はい。こちらですっ!」


少し驚いた素振りを見せながらも、私の手をとり案内する。

って、このルートって会場真ん中突っ切るルートじゃん!? めちゃくちゃ人の目に付くんですけど!?

え? キラズ様!? 腕を絡めないでください!?


真ん中で無理矢理手を振り解く様な真似をしたら流石にヤバイのは分かるから大人しくしているけど……外堀から着実に埋められてない? 大丈夫?


キラズ様と不本意ながら腕を組み続け、パーティ会場を出る。


「キラズ様! なんであんなことをしたのですか!?」

「特に嫌がっている素振りは見せませんでしたもの。つい、やってしまいましたわ。………それとも、私にされて、嫌でしたか……?」


不安そうな表情でこちらを伺うキラズ様は、はっきり言って可愛い。

断ることに罪悪感を感じる。


「……いえ、構いません」


だから、許した。可哀想な顔を見るのも、好きじゃないし。不本意だけど、許した。

キラズ様が驚いた素振りを見せる。


「その、一緒に食事をするのですよね? どこですか?」


沈黙が続いて、ジワジワと恥ずかしさが込み上げてきたから照れ隠しに話題を出す。


「へっ、えっ、はい。こ、こちらです」


奇妙な動きを見せた後、さっきとは打って変わって体の動きが硬い。

やっぱり、王子サマがキラズ様に心を開くわけないし、キラズ様への対応間違ったかも。

でも、悲しそうな顔はされたくなかったから、んー……後悔はしてる。

後悔してないって言うべきなんだろうけど、無理だよねぇ。後悔と反省をいっぱいして、前を向かなきゃ。大切なのは「次どうするか」だよね。

うむうむ。一人で納得


「キュリズ様。ここです。早速、中に入りましょうか」


いつの間にか目的地に着いていたみたい。キラズ様が扉を開けているから私が先に中に入らせてもらう。

パタンと扉が閉じられ、中にあったソファへと座らせてもらう。仮眠することもできるのか、ベッドまで用意されていて、流石は王族。


「キュリズ様。お食事はそちらの机に置いといて、こっちです」


いつの間にかキラズ様の皿は机の上に置かれ、キラズ様はベッドに座り込んでいた。隣をぽんぽんと叩き、こちらを誘う。

食事は後でいいのか、それとも、眠いのかな?


「眠いのですか?」

「いえ、そういうわけでもないのですが……少し、お話のお相手をしていただけないかと」

「なるほど。私で良いのならお相手しましょう」


誰かと話していれば眠くなる、みたいな?

眠くないって言っていたけど、眠そうだしね。


「貴女様が寝てしまうまではお話にお付き合いしましょう」

「あら……眠くないと言っているのに」


少しばかり嬉しそうに微笑んだ後、彼女は何かを話すために、口を開いた。

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