第9話
うわぁ………匂いがやばいなー。
生ゴミとか、何か腐っているような匂いが色々と混じり合い、ヤバい状態となっている。要するに臭い。
そして、周りをパッと見渡してみても、中々に酷い。ホームレスと言える人間が所々に倒れていたり、座り込んでいたりしている。後は、蝿にたかられている、動いていない人間もいる。
…………まぁ十中八九、死体だろうね。
あーヤダヤダ。グロ耐性はないんだよ。あんま見ないようにしたいけど、こういうのも多くあるだろうし、覚悟しておこうか………
まぁ知ってはいたけど、進めば進むほど、比例して人が多くなる。人が多くなるってことは、ここではあまり良い意味を持ってはないのでぇ………
うん。目の前で人が殺された時はどうすればいいのか分からなかったよ。
それでも、私が死体に目を入れたのはほんの一瞬。すぐさま目を逸らしたとかではなく、大量の人間がその死体に集り、気付いたら全て無くなっていたからね。……………どうなったかは想像しないでおこう。世の中、知らないでおいた方が良いこともある。
他には、ホームレスというか、まぁそこら辺に寝そべっている人だね。前世の言葉に、「出る杭は打たれる」ってのがあったけど、逆に言えば、出ていない杭は打たれないわけで。そこら辺にいるホームレス達もそう。なんの害にもならないから殺されない。ああ、でも、多分裏組織的なやつの構成員で、下っ端そうな奴が適当にホームレスを殺したら、手酷い反撃にあったな。周りのホームレスの人間達に。
数は力ってことをまざまざと見せつけられたね。うん。
多分、自身に危険を及ぼす者は排除するって考えが一致した結果、ああなったんだろうね。
まぁ賢く生きろってことか。
そして、一番嫌なのが子供の存在。捨てられたのか、はたまた親がここの生まれだったのか、どちらにしろ、恵まれていない子供の存在が見ていて痛ましい。目を逸らして、無いものとして扱う。
見えなければ無いのと同じ。だからなるべく目を逸らす。
と言っても、上手く生きて行ける人間というのは子供の中にもいるようで、なんとかやっていけている様子。
スリとかすれば、お金は手に入るからね。
それでも、1人だけなら微々たる量しかお金は手に入らないが、複数人いればそれも異なる。
そういえば、最近スリの被害が増加しているとかあの教師が言っていたような気がするけど……………
まぁ私には関係ないか。
まぁ悪い所も多々、というか大半だけど、気になる物もあった。やっぱり、表では売れない物もここでは堂々と売られている。例えば、お薬………とかね? うん。
売られているってことは需要があるってことだからね。ちゃーんと買い手が居ましたよ。吸ってるところも見たしね。
あと他には、武器かな。「人殺します!」って主張してるナイフだったり、暗器?だっけ? 暗殺道具っぽいのもあったね。使い方は見ただけで分かるほど知識豊富では無いから置いといて、普通に食べ物や薬草とかも売っている。値段も安いし、安定した食料供給は、この国ではなんとかなってるっぽい。薬も普及しているっぽいから、怪我や風邪にもなりにくいのかな?王子サマの時も風邪はさっさと治った記憶があるし、多分そう。いや、でも、一般市民がそうとは限らないか…………王子サマは上流階層だから、価値観は一致しないだろうし、うーん……………まぁ考えても仕方ないね。
次の所に…………
「うわっ!」
店の前に立っていたら、子供にぶつかられた。
「チッ………なんで何も持ってないんだよ………」
ああ、スリか。残念だけど、財布もそれ以外も、何も持ってないんだよねー。私を狙った理由は当然、店の前にいたから金を持ってると思ったからなんだろうね。残念でしたー。ただの冷やかしでーす。
ひとしきり心の中でスリの子供を煽ったところで、ふと、思ったことがある。彼または彼女は何故1人だったのだろうか。
スリというのは複数人でやるものだ。人混みの多い中なら、単独でやっても問題はない。しかし、ここは座り込んでいたり寝転んでいる人は多く居ても、歩いている人など、今は私ぐらいだ。
だからこそ、複数人でやる。
複数人でやるなら、犯人が絞れないからだ。仮に財布を奪った人間が分かったとして、その財布を他の人間に渡してしまえば奪った人間は犯人では無い。この国は、冤罪は犯罪だという法律がある。冤罪だった場合、冤罪をかけた人間はかけられた側に罰金を払わなければいけない。
その結果、財布と、罰金を手に入れ、素晴らしい収入になる。
ああ、何故冤罪になるかと言えば、証拠が無いからだ。貴方は、「コイツが俺の財布を奪った! 法律で裁いてくれ!」と、証拠もないのに言ってくる人間を相手にするか? 私なら無視するし、この国なら冤罪として扱われる。前世には防犯カメラがあったが、この世界にそんな物があるはずも無し。
とまぁ、そんな感じで複数人でやる方がリスクは格段に下がるし、メリットが大幅に上がる。
んー…………やっぱり、仲間が居ないのかなぁ?
でも、何か違うような…………まぁ気にしても仕方ないかぁ。
さっさと行こ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます