第10話
一通り見て回ったけど、中々に面白かったなー。まぁ何も買えなかったから、そこは少し悲しいけど。
ん? あ、前から子供達が来てる。またスリかな?
ぶつかられるのは面倒なので道の端へと避ける。少し悔しそうな顔をしたのは見なかったことにする。
やっぱり、スリか………何も持ってないし別に良いんだけど、集団だったなぁ………うーん、やっぱりあの子、おかしかったよね? 普通は集団でやるものだし………なーんかきな臭いけど、私にはどうしようもできないかなぁ?
ん? 言い争ってる声が聞こえる。別にここじゃ、喧嘩の声なんてそこら辺で聞こえてもおかしくはないが、どこか聞いたことのある声があったから、気になって見に行く。
野次馬根性とも言う。
えーっと、こっちかな?
お、言い争う声が近付いてきた。
「お前が俺達の財布を盗んだんだろ!?」
「俺はそんなことをしてねぇ!」
「嘘を吐くな! 俺達の仲間が見たって言ってんだ!」
聞こえる感じ、数は3人?
「ああそうだ。俺は見たぜ。コイツが財布を持ってやがる」
いや、4人か。聞いてみると、スリ関係で言い争ってる感じかな? 多分、盗んだ人1人と、盗まれた人3人って感じ?
んで、盗まれた側が詰め寄ってるって感じか。まぁ、手を出す相手が悪いよね。声からして破落戸っぽいし、盗んだのがバレたらそりゃヤバいよね。とは言っても、ここら辺を呑気に闊歩してるのは馬鹿かコイツらみたいな武力を持ってる奴だけだしね………
私? 私は…………うん。第三勢力だよ。馬鹿じゃない。決してない………! よし。自己暗示完了
それよりも、どうしようか? 着々と近づいては来てるけど、巻き込まれたら嫌だなぁ。
チラッと、チラッと見るだけにしよう。声とか音も立てないようにして………えいっ。
あー…………スリした子ってあの子かー。さっき、私にぶつかってきた1人ぼっちの子だね。声からして、少年? まぁ、分からないけど。
こんな場所だから、男と偽る女性も少なくないだろうしね。私は逆………いや、これが普通だけど。
「ちっ、違う! 俺はやっていない!」
あー、これはもうダメかもね。ここは弱肉強食だし、強い力を持ってる者が正義だもんね。
段々と詰め寄られ始めたし、逃げ場が無くなってきている。
もうどうしようもないかな。
それじゃ、私はさっさと御暇しよう。あんな屈強そうな男3人に囲まれたら、私のようなか弱な人間はそっこーでボコボコにされちゃうよ。
「…………?………!!」
ん? あの少年(仮)がこっちを向いた様な………? 気のせいか。
「あっ、アイツだ! 俺はアイツに指示されてやったんだ。だから俺は悪くねぇ!!」
そう叫んだ途端、こちらに走り寄ってくる少年(仮)……………ほえ?
男供は突然叫び出した少年(仮)に呆気を取られて簡単に逃してしまう。そして、その少年(仮)を目で追いかけ、私を視界に入れる。
少年は、私達が呆然としている間にどこかへと走り去ってしまった。
「チッ…………アイツ、逃げやがったぞ。どうする?」
「追いかけても良いが、表に出られたら面倒だ。仕方ないが、諦めるとしよう」
「そうだな…………それよりも、アイツは"これ"に指示されたって言っていたが………どう思う?」
我に返った男達はそのまま作戦会議を始める。
「まぁ真偽なんてどうでも良い。アレは、女だろう………?」
「…………そうなのか?」
なんか嫌な予感するんだけど………?
「隠してはいるが髪が長い。体付きも男のように、硬いようには見えない」
まぁこんな所にいる男性なんて大抵ガタイいいもんね………
「まぁそれ以外の部分も引っ込んではいるが………どうする?」
「んなの決まってるだろ……!」
私、身体は男性ですからね? 引っ込んでるのは仕方ないんですよ。前世のコンプレックスとかではない。ないったらない。
あと、不穏な事が決定したような……?
「おい、女ァ…………」
気持ち悪い声で呼びかけられ、体がビクリと震える。
「まぁとりあえず、俺達の慰め者になってくれよ?」
ハイ、最悪な事決定〜
なんとか六景逃げるが勝ち! 撤退!!
「おっと、何逃げようとしてんだぁ?」
すぐに腕を掴まれる。足速ッ!?
「まぁ適当に遊んだらどこかしらに売り飛ばせばいいだろ。それなりの小遣いにはなるよな?」
「ま、多少価値は下がるだろうが、そこそこの値段になるだろう。現在はそれなりに需要があるらしい」
嘘ッ!? この国、人身売買あるの!? いや、あの教師が教えてくれなかったし、多分合法じゃ無さそう。
と言うかそれよりも、どうにかして逃げ出さなきゃ………でも、腕を掴まれてるし………
どっ、どうすれば良いの……!?
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