第7話

記憶を漁ってみた感じ、抜け出し方はとても簡単。

まず、お手洗いに行くと申告。

その後、トイレに行くふりをして窓から庭へと飛び出す。ここは2階だからちょっとした身体能力があれば飛び降りても問題なし。

そして、とある小屋に行き、ローブを纏って市街地に出るって感じ。


なるほどなるほど…………簡単そうだね。


ちなみに、暫く帰って来なかったら当然教師に疑われる。まぁこれはとある小屋に行けば良いから大丈夫だし……………うん! 問題なさそうだね!

取り敢えず言うとしよう。


「すみません」

「どうしましたか? キュリズ様?」

「お手洗いに行ってもよろしいでしょうか?」

「ええ。構いませんよ」

「ありがとうございます」


よしよし…………

それじゃあ、ここから飛び降りて…………よっと。


トスッ


さっすが王宮お抱えの庭師。土がふかふかで落下の衝撃も全く伝わってこないし、音もほぼ出てない。心の中で感謝の言葉を述べておこう。

ありがとう。


さてと、とある小屋に向かいますかー。

そういえばこの小屋に名前は無いんだよね。だから私もずっと、とある小屋って言ってるんだけど。

何か名前付けた方が良いかな?ま、後々考えようかな。


とある小屋に着いたので扉を開く。

ギィッと、扉が軋む音を立てながら、それを無視して中へと入る。


「やっほー」

「はぁ……………また来たのですか…………」

「そんな溜め息つかなくてもいいじゃないか?」

「貴方様が頻繁にサボるからですよ………」


彼は王子サマの悪友、ってやつ、かな?

あんまり男の子と友人とか良くわかんないし………多分悪友でいいはず………

実際は王子サマのサポーターで幼馴染なんだけどね。

名前はスクリエマ・スローズ。先程言った通り、幼い頃から一緒にいる仲で、王子サマをサポートしたり、基本的な価値観を身に付けさせるためにいる。

王族は全員箱入りだから、一般的な価値観を身につけさせられた者が送られて来る。同年代ってことも大切らしい。なんでかは知らないけど。

まぁそんな感じで幼い頃から一緒に居たから仲も良いし、王子サマの融通をある程度聞いてくれる。

なので、王子サマの成り代わりを頼んでいるんだ。こうすることで教師に疑われないようにするってわけ。

それに、王子サマとも身長が同じぐらいだし、声も似ている。後は少し髪型を変えれば、ほぼ王子サマと同じだ。


「それじゃ、頼んだよ」

「はぁ………分かりました………」


全くもって乗り気じゃ無いが、やってはくれる。


さてと。

私はローブと、ウィッグを取り出す。

もし、王子サマの顔を知っている人がいたらバレちゃうから、パッと見ただけではバレないようにする為のローブ。

また、ローブを外しても他人の空似と思ってもらえるように女性らしく見せる。


……………………これでよしっと。

さてさて、中世の街並みとかどんな感じなんだろ?王子サマの記憶があるけど、敢えて見ないようにしている。楽しみをとっておくためにね。


あ、その前に抜け出さなきゃ行けないんだ。

私は王族だから、当然王城に住んでいる。けれど、さすがに正門から出るわけにはいかない。

人に見られないようにすることが大切。なので、抜け道を使う。

王家の人間しか知らない抜け道ってやつだね。

もし、何かあった場合はここから脱出するためにある。それを使って王子サマや私は市街地へと向かうってわけ。



えーっと確かこの辺に…………ああ、あったあった。

少しだけ色のおかしい地面を見つける。ここだけなんか……色がおかしいんだよね。まぁ、脱出時にわかりやすくするためなんだけど。


ここを動かして………お、開いたね。

ここを潜ったら行けるかな?


ま、向かいましょーかー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る