第6話
「え?」
「ふふふ………ボタン様、もう言ってしまわれるのですか?」
「え?」
先程まで私の手を掴んでいた存在がむくりと体を起こす。私は少しだけ体を後ろに傾ける。
そのままの状態だったらキスしちゃう体勢だったからね。
「…………起きていたのですか?」
「はいっ! キュリズ様を驚かせようと思いまして……」
クスッと笑われる。
気付いてなかったし……
爺やは気付いてて言ってくれないし……
もしかしなくても私の周りって敵しかいない??
泣きそう…………
それに、爺やって私の執事だよね?
キラズ・バランの執事になってない??
味方がいないよ……
「バラン公爵令嬢、いつから起きていたのですか?」
「そうですね………大体、日が昇っている頃には起きていましたわ」
随分と早起きですね!?
「えーっと、いつも同じ時間帯に起きているのですか?」
「いえ。隣に想い人が居ると思うと……緊張してしまって………」
何て返せば良いの?これ。
「良かったですね」、明らかに変でしょ……
「そうなんですか」、他人事感……!
どれも違う気がする………
「キラズ様。ご両親がご心配なのでは御座いませんか?
そろそろ戻るべきかと思いますが………」
「ああ、ボタン様。ありがとうございます。
そうですね。もう少しだけ居ていたいような気もしますが、戻らさせていただいきます。
それでは、キュリズ様。ご機嫌よう」
上品なカーテシーをしてから部屋から出ていく。
爺やのフォローによってなんとかなったよ。
でも、爺やのせいでこんなことになったし、感謝はしない。
というか、いつの間にドレスを着ていたんの………?
起きた時かな………
音も立てずに着替えたんだろうね………
無駄な努力が感じられるよ………
「それでは、若様。お着替えを致しましょう」
「ん、ああ。お願いするよ」
複数の使用人がほぼ音を立てずに着替えを持って部屋に来る。
着替える時も他人にやってもらうのは上位身分者って感じがするなー。
「爺や、今日の予定は?」
「午前午後、どちらも政治学です」
「そうか…………」
確か、王子サマは政治学が嫌いなんだっけ?
人を導くような器じゃないから、やりたくないとか何とか。
私もやりたくないなー、政治。
人を導くことなんて出来るわけないし、私は導かれる側だし。
やっぱ第二王子に王位譲ろうかな。
譲れるかなー…………?
「それでは若様、向かいますよ」
「ああ、分かった」
着替えが終わり、別の部屋へと移動する。
確か、王位継承者は色々と学ぶ必要があるから、小部屋を用意して専用の教師を呼び、そこで授業的なものを受けるらしい。
めんどくさ………
義務教育は終わったのにまた勉強しなきゃいけないのか………
私は、勉強が嫌いだし、働きたくないし、家でダラダラしてたいし、って感じの典型的なダメ人間の思考してるからねー。
「勉強好きー」とか、「仕事にやりがいを感じるー」とかって言ってる人は尊敬するよ。ほんと。
-----数時間後-----
飽きた
授業を延々と一対一で受けてたけど、飽きたね。うん。
記憶にある知識と、前世の時のあやふやな政治観念があるせいで頭はこんがらがって来てるし、色々と教師が詰め込みまくって来るから面倒くさくなってくるし……………飽きるのも仕方ないよね!!
どうしようかな………?
面倒だし、抜け出しちゃうかぁ!
王子サマも同じ事してたしね。別に問題ないでしょ。
でも、一対一の状態だから、抜け出そうと思っても簡単に抜け出せないんだよねー
王子サマの時はどうやって抜け出したんだろ?
方法がわかれば多分再現できるはず。
なんか教師が喋ってるけど無視して記憶を漁ろうか……………
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