第5話

んぅ…………?

ああ、朝か。

おはようございます


一番初めに思い付いたのが「出勤」という言葉なあたり、若干の社畜根性が顔を出してくるなぁ………

えーっと確か………そうそう、転生したんだっけ?

ん?転生? 本当に転生だっけ?

別に誰かに言われたわけでもないし………いやまぁ、体は男性になってるから転生でもいっか。

それに、ユリス王国なんて前世では見たことも聞いたこともないしね。


それで、昨日の夜、キラズ・バランって名前の公爵令嬢が来てたはずなんだけど…………


あ、いた。


上半身を起こしていた為パッと見ただけでは分からなかったが、まだ寝ている様子だ。

朝に弱いのかは知らないが、もしそうなら可愛いと思う。

うん。可愛いだけね? それ以上の気持ちは抱かないから。

それよりも、そろそろ起こしたほうが良いのかな? 窓が付いているから外が見えるけど、日はそこそこ昇っている。

午前8〜9時ぐらい? まぁ大凡の予測でしかないからどうでもいっか。


コンコン


ん? ノック音だ。ボタン………爺やが来たのかな?


「開いてるよ」

「失礼します、若様。昨夜は如何でしたか?」

「ああ、キラズ公爵令嬢を招き入れたのは爺やだったな…………」

「ハッハッハッ。お若いお二人が何ともいじ らしい状態でしたからね。

この老骨、少しばかりキラズ様にお力添えをした次第ですよ」


好々爺然と笑う爺や。

口には出さないけど、少し面倒だったな、って思っちゃったよ?


「まぁそのようなお顔をなさらないでください」


口に出さずとも表情に出ていたらしい。

王子様だから表情に出したら不味いのでは………?

そこら辺は直した方が良いのかな?

いや、王様になる気は無いし別にいっか。


「それよりも、キラズ様を起こしてくださいますか? 若様に起こされると喜ぶでしょうから」


うえー…………起こさなきゃダメ? このままにしておきたいんだけど。

絶対キラズ・バラン喜ぶじゃん………

調子に乗りそうだし嫌なんだけど………

私は好かれたくないの!


「ぅー……………」

「そう言わずに……バラン公爵家との関係も考えると、嫌がっても無駄なのですから」


………そうなんだよね。

バラン公爵家以外は、駄目なんだよねー


公爵は3人いる。

1人は、バラン公爵

もう1人が、ハスイ公爵

そして最後に、メルプリア公爵


全員娘はいる。

だが、他の2公は駄目だ。

バラン公爵は権力に興味が無い。ただ、旧い王家の血が流れているから公爵になってるってだけ。

だけど、他の2公は、権力を望みすぎている。

娘を使って王族への関わりを持とうとしている。

藤原道長みたいな感じ?

そんな感じで面倒なんだよね。だから、バラン公爵家と縁を結んで、2公は遠ざけようとしてるんだけど。

それでもまぁ、王子サマがこんなんだしねー………

まだまだ付け入る隙はあると思って諦めてないらしいし、だからこそ、私とキラズ・バランが仲良くすれば他の公爵達も離れると思ってるからねー。

でも、私もキラズ・バランとは婚約したくないし…………


みたいな感じで色々な思惑が飛び交ってるんだよ。


「若様? それほど嫌なのですか?」


ん…………考え事をしていたら爺やに不審がられた。

ま、とりあえず起こそうか。

体を揺すって、声をかける


「バラン公爵令嬢、バラン公爵令嬢。起きてください。もう朝ですよ」

「ん…………んぅ…………」


唸り声しか聞こえないし、起きるの? これ。


「バラン公爵令嬢。起きてください」

「んんっ…………キュリズ様…………?」


ん? 意識がハッキリしてきたかな?


「はい。そうですよ。起きてください、お願いします」

「んー……………えいっ………」


まだ寝ぼけているのか、体を揺すっている手に抱きついて来た。

まだ起きてないのー………?


「…………………ふふっ」

「ん? 爺や、何か言った?」

「いえ、何も」

「そうか?」


気のせいかな…………?

まぁいいや。起こすのを続けよう。

もう片方の手を使って………


「バラン公爵令嬢……起きてください。あと、私の手を掴んでますし、やめてくださいよ……」


女の子だからあんまり強い言葉使いたく無いし………体を軽く揺するのから、頭をペシペシと叩くに変える。


「んにゅぅ……………」


叩くのを止めて欲しいのかキラズ・バランの手がこちらの手を掴んでくる。


……………これ恋人繋ぎじゃない?

何というか、これってはたから見たら結構滑稽?


だって、私の片方の手は抱きつかれてる………腕を絡ませられてるような状態だし、もう片方の手は恋人繋ぎしてるし……………

バカップルかな?

爺やは何もせずにこちらを見ているから、声をかける。


「ちょっと爺や、手伝ってよ」

「ふふふ…………その必要は御座いませんよ。

バラン様。起きていらっしゃるのでしょう?」

「えっ?」

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