第6話

 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴り、やっと最後の授業が終わる。生徒たちはおのおの放課後の過ごし方に移る。そのまま帰る人、教室に残る者、部活にいく人。

 秋月も鞄に物を詰め込み、部室に向かおうと立ち上がる。


「やっと終わった…今日は美術部の活動があるから早く部室に行かないとな」


 隣の席では同じく鞄に物を詰め、帰る準備をしている篠原。そういえば、あれから特になにもないな。いつも通りのただのお隣さんになってしまった。


 そんなこと思っていると、彼女はすでに隣の席からいなくなっていた。すると、篠原の友達らしき人たちの、ひそひそ声が聞こえてきた。


「最近の篠原なんかおかしくない?」


「なんかどこか上の空っていうか、ボーッとしてない?」


 何かあったのか?あとで聞いてみるか。この間モデルの協力してもらったし。とりあえず美術室にいくか。


 廊下を歩きながら、秋月は今日描く絵のことを考えていた。風景画か、場所に迷うな。校舎の風景?それとも夜空、山もありだな。


 悩みながら歩いていると、いつの間にか部室の前にいた。あれ?放課後にこの部屋使うの俺だけなのに、なんで扉が開いているんだ?


 気になりながらも、恐る恐る中を覗く。そこにいたのは…


「あれ、篠原?」


「くるのが遅いわよ、秋月くん」


 なんで美術室に篠原が?もうモデルになる必要はないのに。なにか用でもあるのか?


「なんでここに?」


「実は相談したいことがあって」


 もかしてさっきの話と関係があるのか?

 秋月は椅子を引いて座り、篠原も少し緊張した様子で対面に座る。


「実は、わたし…」


 思わず固唾を飲み込む。あの篠原の悩み。俺に、解決できるような悩みなのか…


「わたし、秋月くんと同じ美術部に入ろうと思ってるの」


「へ?」


「わたし真剣に悩んだの。今から初めていいのかしらって。絵心ってそう簡単には上達しないし」


(本当は秋月くんと、一緒になりたかっただけなんだけど。美術部秋月だけだし、2人きりになれるかなーって)


 想像していなかった言葉に思わず笑ってしまう。


「もちろん、入ってくれるなら嬉しいよ。最初は楽しむことが大事だし、俺がつきっきりで教えてやるよ!!」


「やったー!…じゃなくてありがとう秋月くん」


 篠原は思わず顔が緩んで笑顔になるが、すぐに切り替える。


 そうだ!せっかく風景画の課題がでてるし、実際に描きながら教えてあげよう。

 あと自分用の道具とか色々必要だろうし、俺が前に使ってやつ貸してあげよう。そのために一回俺の家に呼ばないとな!!


「篠原いまから俺の家こいよ!」


「え、えぇぇー!!」


(そんないきなり。大胆…)


 彼女は顔を真っ赤にしながら叫んだ

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