Mission 1
Mission 1
冷たい夜風が霧を運び、チャーリー感染症研究所は不気味な沈黙に包まれていた。建物の内部は暗闇に覆われている。外には虫の鳴き声だけが響き、周囲の静寂を一層際立たせていた。
建物の状況を、遠くから、双眼鏡型の暗視スコープで確認している男がいた。
男の名は、コードネーム:リボルバー・ジョーンズ。元ネイビーシールズ隊員で、現在は、民間軍事会社(PMC)通称:ブラック・フォース(Black Force)「戦争ビジネスマン」になっている。
「こちら、ジョーンズ。リチャード、聞こえるか?」
無線機からは微かなノイズが混じった後、応答が返ってくる。
〈こちら、リチャード。クリアに聞こえてる〉
「予定通り、ポイント・チャーリーに到着した。これからチャーリー感染症研究所に潜入する。まずは地下研究所の入口を見つける……」
〈了解。気をつけて進んでくれ。細菌兵器の証拠を確保したら、データを送ってほしい。幸運を祈る〉
「ああ、任せてくれ」
リチャードは、俺の昔からの相棒、戦友だ。
ある日、米国チャーリー感染症医学研究所の地下で、極秘に軍事技術開発・細菌兵器などの研究が行われていると言う情報を入手した。その調査のため、地下研究所に単身潜入を開始——。
建物に到着すると、外壁に沿って慎重に進み、地下へ続く階段を発見した。
「リチャード、地下への入口を発見した。周囲に異常は見られないが、警戒を怠らずに進む」
〈了解。入手したデータによると、地下には複数の部屋があり、中央に細菌研究室があるはずだ。気をつけて進んでくれ〉
無線を切り、階段を慎重に降り、なれた手つきで扉を解除。奥へと進んでいった。
「リチャード、地下に到達。内部は予想以上に荒れているが、警戒は怠らない。これから細菌研究室を目指す」
〈了解。何か異常があったらすぐに報告してくれ〉
廊下を進み、監視カメラが作動していないことを確認する。廊下の奥には重い鉄扉が見えた。
「リチャード、鉄扉を発見。ここが細菌研究室だろう。これから扉を開けて内部を確認する」
〈気をつけろ。内部にはセンサーがあるかもしれない。慎重に操作してくれ〉
「分かってるよ」
ため息をつきながら、装置を取り出し、慎重に扉を開ける。
扉の向こうは暗闇が広がっている。
「扉を開けた。内部は暗闇だが、異常は見られない。これから調査を続ける」
〈了解。周囲に警戒しながら進んでくれ〉
懐中電灯を取り出し、部屋の内部を照らす。実験器具や研究資料が散乱していて、中央に異様な冷却装置が設置されていた。
「リチャード、冷却装置を発見。内部に細菌兵器と思われるものが複数ある。情報は本当だったんだな——」
〈間違いない。細菌兵器だ。証拠を確保してくれ〉
「了解。これから証拠を確保する」
写真を撮影し、データをリチャードへ送った。
「データを送った。確認してくれ」
〈了解。確認した。よくやった、ジョーンズ。帰還してくれ〉
上手くいきすぎている。
次の瞬間——。
遠くから、銃声と悲鳴が響く。身を潜め、銃を構える。
「リチャード、銃声が聞こえた。九時の方向!」
静寂な研究室が、緊迫感に包まれる。
〈どうやら敵がいるようだ。気をつけろ!〉
ジョーンズは周囲を警戒しながら、部屋の中で待機する。ドアの外から足音が近づいてくる。
「足音が近づいてくる。おそらく敵だ」
ジョーンズは銃を構え、ドアの向こうに影が見える。ドアが開かれ、黒マスクをした武装した男が侵入してくる。
「敵を確認。排除する——」
武装した男の背後から、忍び寄り、男を制圧した。
部屋の中に沈黙が戻った。
「敵を排除した。部屋はクリアだ」
〈了解。無理はするなよ。なるべく戦闘は避けて、地下の入口まで戻ってくれ……〉
「了解。テロリストを隠し、すぐに向かう」
少しの沈黙の後、リチャードは思いがけない言葉を口にする。
〈ジョーンズ! 大変な事態になった。武装したテロリストが地下研究所を占拠したと報道している……〉
「占拠……? 一体どう言うことだ?」
〈分からない。どこから情報が漏れたんだ……。とにかくジョーンズは、その場から離れるんだ! 考えている時間はない——〉
「ああ、分かった。チャーリー・ポイントへ向かう!」
マスクの男が倒れている。目元が俺にそっくりだ。恐る恐る、マスクを外した。
「うわ!」
顔は俺にそっくり、いや、クローンだ。
俺はパニック状態になって、その場を離れた。
「リチャード! 聞こえるか? テロリストの顔を確認したが、俺だった。一体どう言うことなんだ?」
〈落ち着け、ジョーンズ。パニックになるのも無理はない。深呼吸して、とにかく落ち着くんだ〉
「落ち着けるわけないだろ! 無理はない? さっきから、何を言っているんだ?」
〈ジョーンズ、状況が変わった。君に次の
「ちょっと、待ってくれ! なんで、俺がテロリストと戦わなくてはいけないんだ。話と違うぞ! 特殊部隊はいつ来るんだ?」
〈特殊部隊はこない。君の力で、任務を遂行してほしい。頼んだぞ……〉
無線が切れた。再び静寂に包まれる。
振り返ると倒れていたはずの男の顔が、
「クソ! 一体どう言うことなんだ?」
謎ばかりだ、なぜ、テロリストが占拠したんだ? 黒幕は誰だ?
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