プロローグ

Prologue

 

「これが戦争か……」彼はひとりごとのように呟いた。

 

 かつての平穏な日々が、今や遠い記憶となっている。

 煙が戦場を覆い、血の匂いが漂う中、ジョーンズは敵陣の最前線に立っていた。

 

 敵が目の前にいる。彼は一瞬ためらった。銃口は揺れ、指は引き金に触れたまま動かない。仲間たちの叫び声が耳に残り、死者の姿が地面に広がっている。引き金を引けば、一瞬にして命を奪うことができる。しかし、それは同時に、敵の生命をも消し去ることを意味する。彼は過去の出来事、家族の顔、そして平和な日々を思い出す。彼の決断が未来を塗り替えることを知りながら、彼の運命はこの一瞬に委ねられていた。

 

 そして、彼は最終的に決断を下し、引き金を引いた——。

「任務を遂行する」心は怒りと悲しみに満ち溢れていた。

 

「爆薬を設置完了。これから撤収する。任務完了だ」 

〈了解。よくやった、ジョーンズ。帰還してくれ〉

 

 任務が完了した。ほんの一瞬、安心してしまった。

 次の瞬間、物陰から銃声が聞こえた。

『ジョーンズ! 伏せろ! 敵だ!』

  

 戦場では、一瞬の迷いが死につながる——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る