森の中には

 森の奥へと行くにつれて、モンスターは凶暴きょうぼうになっていく。最初はスライムやワーム。ウサギとかいたっけ?以外だったのはイヌとかネコだ。殺すのには少し躊躇ためらいがあった。でも今後の俺のためなんだ…すまない!


「くっ、中々強いな...」


 そう、簡単には倒せない。なぜならここは新ステージである、山吹やまぶきの森だからだ。蒼の森では見た目、攻撃力、防御力…全てが可愛いものだった。言い方を変えれば、雑魚というやつだ。

 だが山吹の森では、スライムなど弱いモンスターは出てこない。ゾンビやスケルトン、ゴブリンなどがメインだ。どうやら山吹の森のモンスターたちはスキルという…まぁ、なんというか、魔法?手品?みたいと言うか、何というか。

 例えば、こう…手の平を敵に向けて、魔法の名前を叫ぶと、炎が出たり、上から水が降ってきたり…ん?それって雨じゃね?じゃあ、雨って魔法なのか!?

 誰かが空に向けて、スキル名を叫んでいるのか!?すげぇな、地球って……いや、多分違うな。

 そんな俺は今、そのゾンビと戦っている。


「ゔぁぁぁ…」

「あっぶね!ゾンビは炎を出すのか」


 ゾンビは手のひらを俺に向け、多分スキル名を叫んだのだろう。俺にはうめき声にしか聞こえなかったけど。ゾンビの手から魔法陣が展開され、その魔法陣から炎が出てきた。

 だが俺には遅い!俺は炎を避けた。俺の後ろを見ると、草が燃えている。小さな炎だが全然熱そうだ。

 モンスターの魔の手は止まらない。ゾンビの次はスケルトンだ。


「二対一とは卑怯な!」


 スケルトンはブーメランを使ってくる。そのブーメランには風のスキルが使われている。


「ぐっ!!」


 あいつのブーメランが俺の腹に直撃した。くそ...ブーメランの軌道きどうがよく分からない。曲がったり、くねったりしてよく分からん!…いや、待てよ?

 これって距離きょりを取っているからか?距離を詰めればあいつのブーメランも当たらないんじゃないか?だが、あのスケルトンは俺の考えを予知したかのように、ブーメランではなく、スキルを使ってきた。


「うわぁぁ!」


 俺は風に吹き飛ばされた。やばい!この高さから落ちたら確実に死ぬ!ざっとビル7〜8階ぐらいの高さだ。どうする?このままじゃ、落下死する!

 俺は考えた。アニメや漫画のように木に入れば枝や葉っぱで衝撃を緩和できるのでは無いか?俺は空中で身体を回転させ、木に落ちた。


「あぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は地面に激突した。でも生きてる!あれって本当だったんだな。


「いてて…でも、もうその手には引っかからないぞ?」


 俺はブラッティソードを鞘に収め、スケルトンに一直線に走った。確か、空気抵抗をなんちゃら出来るって聞いたことがある。あれ?それって人間に効果あるのか?まぁ、いいや。

 

「馬鹿を舐めるなよ?馬鹿には馬鹿なりの考えがあるんだ!スープの出汁にしてやるよ!」


 そして俺は鞘から、ブラッティソードを引き抜いた。逆手持ちのブラッティソードをスケルトンの首に当て、切り上げた。

 あとは、ゾンビ!切ったスケルトンの頭をゾンビに向かって思いっきり投げた。スケルトンの頭はゾンビの顔面に直撃した。


「今だ!」


 ゾンビの心臓にブラッティソードを刺した。ゾンビとスケルトンは光の粒になり消えた。その瞬間、脳内にまた声が再生された。



スキル デストロイを習得しました



 スキル?あっ!スキルってさっきゾンビとかスケルトンが使ってたやつか!名前が…デ、デストロイ?多分、英語だよな?英語も勉強してないから、どういう意味か知らないけど、まぁ強いってことだけはわかる。

 俺は今のステータスを確認した。



ステータスを表示します

 


名前 レルア・カミアス

レベル 3

持ち物 ブラッティソード

    ホワイトクロウズ

    シアンジーンズ

    スライムのお守り

スキル デストロイ 常時発動

称号 ファーストキル

   スライムキラー

   ワームキラー

ゴールド 5銀貨

     14銅貨



「おぉ〜すげぇ〜」


 俺は自分のステータスに見惚れた。スキルという新しいのが入り、俺はテンションが上がった。でも日本を、地球を救うためにはまだ強さが足りない。

 前にはまだ道が続いており、森にはまだ先があった……そりゃ、あるか、森だし。


「なんかヤバそうだな...」


 気配がもうヤバいもん。怖そうだぞ?本当に行くのか俺?さっきまでは太陽の光が差し込んでいたが、ここから先は奥が見えないほど暗い。ほぼ夜だ。明かりがないと分からないくらいだ。


「暗いな…俺、幽霊とか無理なんだよなぁ。出るとき「出来ます」って言って」


 目を凝らせば、少しだけ前は見えるからいいけどさ…ってか、幽霊は喋らないか。



シューダ・ハイラス



 レルアさんに森の方面に行かせてしまったが、ちゃんと奥へ行かないようにと言ってあるし、大丈夫だろう。でもレルアさんは何故、ここが北海道と?

 まさか……いや、多分無いだろう。それにレベル1のステータスなんて見たことない。普通はレベル2から始まるはず…いや、暗いことを考えちゃだめだ!


「さてと…今日もパトロールっと」


 王国内は、特に何も無いか...そう言えばレルアさん、まだ戻ってこないな。蒼の森は低レベルの初心者でも戦える場所。それに一番クレキス王国に近い。何かあったら、ここに戻ってくれるだけで治療は可能。

 その時、私は嫌な予感が遮った。前にもこのような事があった。道なりに進んでしまい、一人の冒険者を亡くしてしまった。

 人はやってはいけないと言われるとやってしまう、カリギュラ現象というものがある。それが起こってしまったら…まずい!

 あんな装備では、死んでしまう!



レルア・カミアス



「なんて読むんだ?」


 俺はもっと奥へと進んでいった。



ステージ しゅもり



「だから森は知ってんだよ!」


 名前からして、絶対強いよな...

 その中はモンスターの気配すら感じない。皆んな逃げたのか?それか俺の殺気に気付いたか?殺させる事に恐怖を覚えたな?今までの俺とは違う、俺は強くなったんだ!


「でも…モンスターがいないとこんなに暇なんだな」


 その時、後ろから人の声と足音が聞こえた。


「…さん!」

「ん?」

「レルアさん!」


 俺の名前を呼んだのはシューダさんだった。


「なんでここに?」


 はぁはぁ、とシューダさんは息を荒していた。膝に手を当て、肩を揺らしている。


「それはこっちのセリフですよ!」


 あれ?ちょっと怒ってる?……あっ、そうだ。森の奥へは行ってはいけないんだった…


「ここがどこか知ってるんですか!!」

「え?朱の森ですよね?」

「違いますよ!ここは…」


 シューダさんが何かを言いそうになった時、地面がグラグラと揺れた。地割れが起き、木々が倒れる。


「ほぉ、人間は久しいな…」

「え、誰?」

「来た…災厄さいやくだ...」


 シューダさんが隣で震えていた。災厄って…災厄の神のこと?最初に言ってたやつじゃん…


「さぁ、我と戦え。人間」

「この声は…地震の神 アースクです…」


 地震の…神…?嘘だろ?

 まさかの神様のお出ましだ。


「さて、ここまで来たのだ。我を楽しませてくれよ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

IQ3の俺が転移したら、神になっていた はぐるま @Hagulma0707

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ