第28話

(見つけた……! 見つけた……! 見つけた……!)


 私は興奮する自分を抑えられなかった。

 胸が早鐘のように鳴り、手に汗がじわりと滲む。

 貴重な資料を台無しにすることを恐れ、私は手にしていた本をいったん閉じ、手巾で汗を拭って息を整えてから再びページをめくって、欲していた記述を指でなぞった。


 ようやく、見つけた。


 隠されていた秘密、その中で知った失う恐怖――

 それを克服する方法を、私はやっと見つけることができたのだ。


(しかし、そのためには十分な身代わりが必要になる……)


 私は眉を寄せる。

 単純にそのへんの浮浪者を捕まえて差し出せばよいという話では、とうていない。

 最も適しているのは、私か、義父になる男か、あるいは。


(まだ、時間は残されているのだろうか)


 それをなんとかして確かめたい。

 彼女にはあとどれだけの時間が残されているのか。

 焦って中途半端になってしまうのは駄目だ。

 確実を期すならば、私が彼女の身代わりになるのが最適なのだが、それは最後の手段に取っておきたい。


 誰か、いないだろうか。

 …………を満足させる身代わり、贄となるべき者が。

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