第11話
「...」
「...」
うん、ナンパだと思われてるよな...いや、実際ナンパか。
「あっ、そうだよね。えっと、俺の名前はアリス=カグラビュール。よ、よろしくね」
動揺しすぎだ!落ち着け!落ち着け!
「...えっとアタシ、リン...よろしく?」
「うん、よろしく」
「...」
「...」
ヤバい。自分で話しかけといて気まずすぎる!何か話の話題を作らないと!
「リンさんも受験生かな?」
「うん」
「そうなんだ...」
「...」
「...」
...え?終わり?俺の前世に鍛えられたトーク力は皆無か?...あっ、そもそも前世の頃から俺とまともに喋ってくれる奴なんていねぇんだわ。
「もし良かったら、一緒に行かないか?」
「...嫌だ」
ヤバい精神的なダメージがクリンヒットした。
こうも異性にハッキリと拒絶されると、辛いものだな...顔には自信あると思っていたが、勘違いのようだった。
「ん?」
「え?!」
すると、リンは俺の手を取り、ジッと見るのだった。いきなり手を触れらた事に驚くのだった。
「ど、どうしたの?変なのでもついてたのか?」
「凄い。お前剣士なの?流派は何?」
「え?あー、剣士ではあるけど。流派は月華琉って奴なんだ」
「月華琉?聞いたことがない。ねぇねぇ!アタシと模擬戦しない?!」
おや?さっきの冷たい態度が嘘かのように、可愛らしく笑顔を見せてくれている。もしや、ここで仲良くなれるチャンスじゃないのか?
「凄い〜、こんな手見るのは初めてかも!どんだけ努力してきたか分かるよ!」
「あはは、高評価ありがとう。まぁ、模擬戦の件はまた今度だな。今は入学試験に集中しないとね」
「分かった!試験入学したら、絶対戦うからね!」
「約束します...」
もしやバトルジャンキーじゃないだろうか?
それから2人はアスカロン学園に向かう。そこには城の様な大きな建物が建っていた。
「...おいおい、こりゃ学校にしちゃデカすぎねぇか?」
「んー、そう?こうなもんじゃない?」
この世界の学校は、これが普通なんだろうか?爺さんと山暮らししていたから、外の世界がイマイチ分からない。
「受験生でしょうか?」
「あ、はい!」
「でしたら、西口からが試験会場であります」
「ありがとうございます」
「検討をお祈りいたします」
西口と言われている方の校門に向かうと、そこには1000人以上はいるんじゃないかと思うほどの人間の数が立っている。
「めちゃくちゃ多いな」
「多分これでも少ない方だよー。この日の試験は平民クラスの試験だからね。平民クラスは多いから1日2000人ぐらいで、4日に分かれてやっているから、明日も同じ人数ぐらい来るんじゃない?貴族や王族クラスの試験は昨日と一昨日の2日間に行ってたらしいからね」
「マジか...」
受験生は12000人ぐらいか?
大体の合格人数は300人ぐらいと言われている。倍率40倍ぐらいじゃねぇか!
「...」
やべぇ、そう考えると緊張してきた...
「それでは試験内容を説明する。魔術師部門を志望する者は第二会場へ、戦士部門を志望する者は第三解除に行ってもらう」
ぶっちゃけどっちも構わないが、リンは戦士部門を志望していた為、第三会場へ向かった。そこには9割以上、腰に剣をさしている者が多かった。残り1割の殆どは槍を持っている。戦斧や戦鎚もいたが、ほぼ2、3人程度だ。
「私は剣術教師のサラゲだ。今日の試験内容は...いや、まずは2人同士を組んでもらう。余ったものは適当にこちらから決める」
メガネの奥は、目つきの悪さ、そして白髪のスーツ姿の男は睨みつける様に俺達を見渡している。
「ねぇねぇ、アリス!アタシと組もうよ!」
「ああ、そいだな」
10分もしないうちに、2人組が完成する。
さて、どんな試験があるのか楽しみでしょうがない。ここで落ちたらどうしようと、不安な気持ちは捨てる。
「よし、今年は丁度だな。それでは、その2人組で戦ってもらう。試験内容は、己の実力を見せてくれ」
「え?」
知っている仲と組めた事に、内心嬉しさがあったが、それが仇になってしまった。今この会場にいるのは1600人ほど、まずは半分減らすのが目的なんだろう。ここで勝っても負けても、せっかく仲良くなったリンとはおさらばになるだろう。
「い、今からでも変えれるかな?」
多分、俺の様な考えは他の人も考えているだろう。
俺の様に1人で試験を受けた訳でなく、友達と一緒に来た者が多いだろう。証拠に、焦り声が会場中ざわついていた。
「騒がしい!滅竜冒険者の目的は竜を狩る事だ。仲間と仲良くする仕事じゃねぇ。出世をしたかったら、例え親友だろうが蹴落とせ」
「...」
はぁ、しゃーない。別に今年落ちたから一生滅竜冒険者になれる訳じゃない。俺はなれたら良いなって軽い感じで試験を受けている。そんな奴が一生懸命の奴を蹴落とすのは違うな。
「あはは、どうやらリンは俺の先輩になるんだな」
「え?何言ってんの?」
「俺は負けるよ。勝ちはアンタに譲る」
「...アリス、アタシのこと舐めてる?」
「え?」
あんなに子供の様な笑顔から、睨みつける様な表情に一変する。
「そんな勝ちはアタシは許せない。アタシは本気のお前と戦いたい。それにその言い方、お前よりアタシの方が弱いって言ってるもん」
「...」
「何を思って負けるって言ってるのか分からないけど、わざと相手が負けた勝ち勝負なんて、アタシ嬉しくない。それは本気でやる人に失礼」
「...悪い」
確かにリンの言う通りだ。
リンも本気でこの試験を受けに来てる。本気な奴に、わざと負けると言われれば誰だって怒るに違いない。今のは俺の失言だ。
「分かった、本気でアンタを倒す。勝っても負けても恨みっこなしだ」
「うん!それが一番。戦うならお互い全力で行こう!」
第十一話 『リンと名乗る少女』
六災の魔女 ちゃんユウ @chanyuu777
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